アンテナは常に高く自分の心に素直であれ 弁護士ドットコム 元榮太一郎会長(第2話)

経験すべてが自分の生きる道につながる

―弁護士や起業家になったきっかけ、志はどのようなものだったのでしょうか。また、どのように志を見つけられてきたのかについて教えてください。

弁護士を目指したきっかけは、大学2年生で物損事故に遭ったことです。自分ではどうしようもない事態に陥った時に、弁護士に助けられました。

この弁護士さんの姿を見て、「こんなに困っている人の力になれる仕事ってすごいな」と素直に感心し、興味を持つようになったのです。

自分の経験すべてが志を見つけるきっかけにつながります。

たとえ、それが物損事故という喜ばしくない出来事であったとしても、私のように自分の道を見つけるヒントになるかもしれないのです。

しかし、そういったきっかけを生かせるかどうかは日頃の自分の過ごし方次第です。常に見識や研鑽を積んで世の中を知り、自分がやりたいことを素直に感じとるための不断の努力が必要です。

多様な情報や知見に触れる際に、頭の片隅に「自分が何をすべきか」を感じ取るアンテナを立てておくと、きっかけを格段にキャッチしやすくなります。

心の準備はいつも十分にしておきながら、経験を重ねていくことが重要であると考えています。

「関心」の掛け合わせが新たなサービスを生む

-12年前の当時、弁護士ドットコムという前例のないサービスにどのようにたどり着いたのでしょうか?

当時、引越し業者を比較するWebサイトのサービスを見つけて、こうした取組の弁護士版ができるのではないかとひらめきました。弁護士もサービス業だからインターネット上で比較できたり、相談できたりすることができれば必ず世の中の役に立つと思ったのです。

先ほどお話しした物損事故に遭った際にも、弁護士を探すのが非常に大変でした。

こうした自分自身が困りはてた経験から、弁護士とかかわったことのない多くの人は、「いざ」というときに解決の糸口をつかめずに困っているのではないかと考えたんです。

比較サイトへの関心と、弁護士を探すのに苦労した経験という関心の掛け合わせにより、弁護士ドットコムのサービスは生まれました。

本サービスを思いついた2004年は、インターネットが勢いを増してきた時代。弁護士についてインターネットで検索をしながら、整理されていない情報量に困り果て、さまよっている人がたくさんいるのではと思いました。

実際に調査してみると、弁護士ドットコムのようなサービスは、未だ日本にはないことがわかりました。「血沸き肉躍る」とはまさにこの時の感覚ですね。

一方で、当時私は、アンダーソン・毛利法律事務所(現:アンダーソン・毛利・友常法律事務所)に勤めていたので、当然のことながら私への親身な気持ち故に両親や友人にはこのサービスをスタートすることに反対されました。

自分の声に耳を傾け続けることで道は拓かれる

―そうした反対の声や世間からの批判をどう乗り越えていったのですか?

「自分の心の声に応えよう」と常に言い聞かせていました。

弁護士は弁護士として活動することが常識だと思われている時代に、心の声だけを頼りに思い立ったが吉日、サービスを思いついた1週間後には辞職届を出し、事業の立ち上げに向けて準備を進めました。

加えて、弁護士を身近にしたい、そして競争が進む弁護士の世界における新しい弁護士の生き方を背中で示してみたいという思いも強かった。

起業家には、「前向きさ」「素直さ」「粘り強さ」の3要素こそが大事だとお話ししました(第1回)が、創業時に周囲から反対された時も、「前向きに」、自分の心に「素直に」、「粘り強く」やれたからこそ、続けることができたのだと思います。

本当に貫徹したいことであれば、「24時間、365日、寝食忘れて取り組める」はずです。

現在様々なメディアに呼んでいただけたり、株式上場が叶ったりすることで、ようやく多くの方に受け入れていただいたように思います。12年間かかりましたが、自分の心の声に耳を傾け続けたことに後悔はありません。

 

 

>>第3話「常識語の反対語が成功」に続く

>第1話「法曹界きってのアントレプレナーが語る起業家に必要な”素養”とは」に戻る

 

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DIMENSION 編集長

DIMENSION 編集長

「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

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