社員の能力を120%引き出すための人事・組織設計 マネーフォワード 辻CEO(第4話)

2018.03.27

「お金を前へ。人生をもっと前へ。」をミッションに、個人向け自動家計簿・資産管理サービスやビジネス向けクラウドサービスなどを展開し、昨年東証マザーズに上場した”国内Fin Techの雄”であるマネーフォワード代表取締役社長辻 庸介氏に起業家に必要な素養や人事・組織論等について聞いた。(全6話)

経営陣には社員が活躍できる環境を作る責任がある

——マネーフォワードは一般的なスタートアップと比較して、従業員30名程度のところで人事部長を採用される等、初期段階から意識的な組織作りや人事設計体制に取り組んでいる印象です。早いタイミングから組織設計に着手されている背景、意図を教えてください。

私は基本的に自分が得意じゃないことは人に任せるタイプなんです。その上で、何をおさえなければいけないのかを考える。事業の初期段階から、人事と広報がすごく大事だと思っていたんです。でも私はそこの専門ではないから、その領域で活躍してきたメンバーにきちんと任せることにしました。

任せた社員は本気で責任を全うしてくれています。早いタイミングで人事部長を採用し、ミッション、ビジョン、バリューをブラッシュアップできたことは今から考えても非常に良かった。

IT企業には、「在庫」という概念がありません。何が資源かといったら、「人」しかないわけです。どうしたら良い人に入社してもらえるのか、いきいき働いて自分の実力を出してもらえるのか。どうしたらアウトプットがしやすく働きやすい環境を提供できるのか、そんなことを大切に考えています。

——任せた社員の方がうまく機能しないことも少なからずあると思います。そうした時はどんな対応をするのでしょうか?

能力と向き不向きを冷静に判断することが大事ですね。

ポイントは、その人の能力より少し背伸びした課題を与えると、本人も面白い仕事だと感じやすく、成長を促進しやすいです。ただし、課題のハードルが高すぎると潰れてしまうことがあるので注意が必要です。

スタートアップであれば、リソースは少ないですし、他の選択肢がないということも少なくない。その場合には、社長が社員の目線まで下りていかないといけません。ギャップを埋めるために、コミュニケーションの質と量を増やしていくことをします。

例えば、課題のハードルが少し高く心配な人に対しては、1日1回話しをして進捗をチェックするとか、サポート体制を考えるわけです。課題のハードルの高さと、課題をクリアする能力のギャップの大きさに応じて対策を決めます。

人は絶対に成長していくので、ちゃんとサポートすると心に決めること。社長はじめリーダー陣にはその責任があると思います。

組織の課題は先読みして手を打つ

——社員の方に対してどんな環境を整えていきたいと考えていますか。

まずは売上を伸ばし利益を出して、日頃頑張ってくれているみんなのお給料を少しでも上げたいですね。また、社員が明るく楽しく仕事に取り組むことが重要だと思いますのでそのような環境を整備していきたいと考えています。

——組織の問題で今まで壁にぶつかったことはあったのでしょうか。

「30人の壁」という表現を聞いたことはありますか。社員が30人を迎える頃に企業の成長の壁ができるという経験則です。これはかなりの確率で起こることだと私は想定しています。

重要なことは、起こるであろうことに対して、どれだけ早めに手を打てるか。どうダメージを少なくできるかを先読みし、あらかじめ対策を考えることです。

——確かに、30名くらいの組織から組織がうまく回らなくなるという話は実感としてもあります。

事前に勉強をしておけば事前に防ぐことができることもあると思うんです。ひょっとしたら早めに手を打ったら、10ぐらいのダメージが5ぐらいで済むかもしれない。それを想像するのが経営者だと思いますし、早めに手を打つべきだと思います。

――組織が成長の壁にぶつからないよう、打たれている手はありますか。

社員が会社の方向性を見失わず、明るく楽しく仕事に取り組めるように、上下と横のコミュニケーションの機会を意識的に確保するようにしました。

経営層と社員の上下のコミュニケーションという意味では、毎週朝会で、持ち回りで役員がビジョンやミッションを語る機会を設けています。

また、朝会では「明るく、楽しく、元気に」が大切だとみんなに伝えています。単純ですが(笑)、本質的にすごく大事だと思うんです。私自身、たとえ辛いときも明るく振る舞うようにしています。自分の発する社内へのメッセージは表現をすごく意識しています。

会社を続ける中で、ミッション、ビジョン、バリューが途中で変わることもありますが、このような会を定期的に開催することによって、社内にビジョンを浸透させていくことができます。

上下のコミュニケーションに関して、特に大切だと思っているのは、すでに色々な会社さんが実施されていますが、1on1の面談です。1カ月に1回、必ず30分設けて行います。お互い、紙に残してテキストベースで対面するのは、すごく効果があることだと思います。まさに組織が変わりますね。

横のコミュニケーションに関しても、年に2回の総会を行ったり、毎月全社的な懇親会やシャッフルランチを行ったりして、メンバー間の親睦を深めてもらうようにしています。

——会社全体の課題を把握し、早期に手を打つための方策はありますか。

人事部長が独自に作った社内アンケートを半期に1度全社的に実施し、組織や社員が抱える課題の「見える化」を行っています。そこで見えてきた課題に対し、どのような打ち手を講じようか、定期的に経営陣で考えていきます。

組織が成長の壁にぶつからないためには、定期的に現状確認を行い、課題をきちんと認識したうえで、課題解決のための打ち手を打つこと、打った打ち手の効果を見てPDCAを回していくことが何よりも重要です。

 

 

>第5話 「投資家の事業への巻き込み方」に続く

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筆者 下平 将人

筆者 下平 将人

筆者 下平 将人

法律事務所、LINE株式会社の社内弁護士(リーガルカウンセル)、新規事業開発を経てDIに参画。DIでは、ベンチャー投資、投資先の経営支援に取り組み、投資先企業の社外取締役等を務める。東京弁護士会所属弁護士。Arts and Lawに所属しクリエーターの無料法律相談を担当。チャレンジングな事業領域に挑戦する起業家と汗をかき、共に理想を追い求め続ける存在でありたい。

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