学生起業から18年。見えてきた起業家にとって重要な”素養” オークファン武永代表取締役(第1話)

起業家にとっても最も大切なものとは

──2007年、武永社長は「眠っている価値(モノ)を必要な場所(人)へ自由に移動させる」ことをコンセプトとしたオークファン事業をスタートさせました。このような先進的なサービスを推進されていく中で感じた起業家にとって必要な素養を教えてください。

起業家にとって欠かせない素養は3つあると思っています。

1つ目に必要な素養は、やはり「志」でしょう。これは不可欠です。外部環境やビジネスモデルは常に変化し、組織の仲間もどんどん増えていく中で、経営者としてぶれてはいけないものが「志」です。

志とは、自分のルーツを踏まえて、自分が一生をかけて実現したいことは何かという夢のようなもので、ビジネスをする上では最初に持つべきものです。ビジネスを長く続け成長させていくうえで、こういう社会にしたいという志が一番重要だと断言できます。人は「志」がある人のもとへ集まるものです。自分の「志」に対して、まっすぐ素直に向かって進める人は、どんなに時間がかかってもいずれ必ず成功すると思います。

2つ目は、意外に「人柄」や「キャラクター」が重要です。

上場してから気が付いたのですが、“先輩に好かれやすいかわいい弟キャラ”や“イジられキャラ”といった人間らしさを出されている人の方が、人は信頼を寄せてくれるように感じます。

私自身も以前は常に殺気立って周囲を威嚇していましたが(笑)、今では他の人からいろいろな話を持ちかけられることは多くなりました。ありがたいことに、周囲の方から見ると、私もそういうキャラクターに少しはなったのでしょうね。とはいっても、キャラクターだけでは勝てません。

最後に、3つ目の素養は、「直観」です。

直観と直感は似て非なるものです。直観は経験から来る暗黙知と世の中の流れの読みが合わさったものだと思います。ロジカルシンキングももちろん重要ですが、経営者には大きな決断をする局面が無数にやってきます。その際はビジネスに対する研ぎ澄まされた「直観」を大切にしています。事業が10数年後にどうなっているかは誰にもわかりません。経営者自身も、違うことに没頭しているかもしれない。

そんな中で、研ぎ澄まされた自分自身の「直観」で期待値の高い選択肢を繰り返し徹底的に実行することが大切だと考えます。

たとえば、ベンチャー投資を行う際の意思決定においても、論理ではなく「この人は絶対に5年後も生き残って事業をやり切ってくれるだろう」という人を選びます。直観力のある人を選べれば、中長期的にはだいたい上手くいくものです。「直観」は起業家にとって欠かせない力だと思います。

武永 修一(たけながしゅういち) 株式会社オークファン 代表取締役

1978年 兵庫県神戸市生まれ。京都大学法学部在学中の2000年にオークション事業を開始。2004年に事業を法人化すべく株式会社デファクトスタンダードを設立し代表取締役に就任。2007年に株式会社オークファンを新設分割により設立し同社代表取締役に就任。2013年に同社が東京証券取引所マザーズ市場に上場。

ぶれることのない「志」が起業家を突き動かす力になる

──最も重要な素養であるとおっしゃった「志」について教えてください。学生時代に起業されてからさまざまな経験をされた中で、志は常に一貫していたのでしょうか。それともその時々で進化を遂げていったのでしょうか。

大学時代に、買い替えのために、自分のノートパソコンをネットオークションで売ってみたところ、中古店に売るよりも3倍以上の値で売れました。そこに着想を得て、フリーマーケットなどで商品を仕入れてネットオークションで販売するようになりました。

その頃から「志」自体は一貫しています。ある人にとって価値のないものが、他の人にとっては大金を払ってでも手に入れたい価値あるものになる。売りたい人と買いたい人を結びつけ、潤滑油のように物を受け継いでよくさせるサービスがあれば、世界中のニーズをマッチングすることができ、社会に大きく貢献できる。

これが私の「志」です。手段や方法は当初から変容していますが、このマーケット自体を底上げしたいという姿勢は一貫しています。

キャラクターをさらけ出すことで道が拓かれる

──「キャラクター」が重要とおっしゃる経営者の方は初めてでとても興味深いです。「キャラクター」が重要だと思われたきっかけや原体験があれば教えてください。

私自身のキャラクターを前面に押し出して積極的に発信するようになってから、事業も加速度的に成長するようになりました。自分の性格と強み弱みを、はっきり認めて周囲に伝える。それは、私自身のキャラクターに合うような人や情報が集まるようになったからだと思います。

私は、昔からモノの売買が好きでした。学生時代に個人事業として転売を開始し、ブランド商品の宅配買取サービスのブランディア(https://brandear.jp/ )を運営する(株)デファクトスタンダードを創業。2007年に同社を売却し、次にショッピング・オークション相場検索サイトを運営するオークファンを上場させてきました。

今では売買の対象に会社も入ります。こうした経歴を発信し続けているので、周囲の人からは、商品だけでなく事業も積極的に売買する人だと認識されています。そうすると、色々な情報が持ち込まれやすくなりました。

2016年に買収したリバリュー(http://revalue.jp 企業が持つ返品・余剰品などの在庫を適正価格で流動化し、透明性あるマーケットプレイスを提供するサービス)もそうです。当時のリバリューの社長が、事業譲渡の話を最初に私に持ってきてくれたのもそんな認識があってのことだと思います。

もし、私がM&Aに積極的なキャラクターを発信していなかったとしたら、この話は持ち込まれなかったかもしれません。キャラクターについては、作り込む必要はなく、素の自分を大切にして良いと思います。

私は、自分が全くオールマイティーな人間ではないということは通関しているので、興味がないことには「興味がない」、できないことには「できない」と素直に言うようにしています。以前は、エンジニアリングに関する知識があまりないのに「それなりにエンジニアとも会話ができるよ」という姿勢を見せるなど、素の自分以上のキャラクターを演じることもありました。しかし、最近ではそんな必要はないと思っています。

むしろ、ありのままのキャラクターを大切にし仲間に頼る方がワクワクするような道が拓けると実感しています。

──「志」と「キャラクター」の関係性について教えてください。まずは「志」を立てた上で、志をベースとした自らのキャラクターを発信していくことが重要ということでしょうか。

その通りです。中国の戦乱の中、劉邦がなぜ最終的に項羽に勝ったのかご存知でしょうか。劉邦は田舎の盗賊の出自で、財力も軍事力も家柄による後ろ盾もありませんでした。一方で、項羽は家柄もあり武勇に優れ、百戦百勝の強さを誇ったと書き残されています。

しかし、一代で漢の皇帝にまで上り詰めたのは項羽ではなく劉邦の方でした。それは、劉邦が他者の話にじっくり耳を傾け、才能を高く認める気質を持っていたので、蕭何や張良、韓信といった極めて優秀な人が多く集まったからだといわれています。

まさに劉邦は人を惹きつけるキャラクターを持っており、これが家柄も才覚もあった項羽に最終的に勝利する決め手となったのです。そして、その人々を生かして中国を統一するという志を成し遂げました。

現在の若手起業家の中には、学歴やキャリアでご自身の魅力を高めようとしている人たちが少なからずいます。もちろんそれも必要だとは思います。しかし、起業家にとって決定的に重要なものはそうした外面的なものではないと思うのです。

 

 

>>2話目「起業家に欠かせない「直観力」の磨き方(第2話)に続く

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筆者 下平 将人

筆者 下平 将人

筆者 下平 将人

法律事務所、LINE株式会社の社内弁護士(リーガルカウンセル)、新規事業開発を経てDIに参画。DIでは、ベンチャー投資、投資先の経営支援に取り組み、投資先企業の社外取締役等を務める。東京弁護士会所属弁護士。Arts and Lawに所属しクリエーターの無料法律相談を担当。チャレンジングな事業領域に挑戦する起業家と汗をかき、共に理想を追い求め続ける存在でありたい。

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