テクノロジー×不動産ベンチャーの組織論 GA technologies 樋口龍CEO(第5話)

GA technologiesは、不動産業界をテクノロジーの力で改革する『Real Estate Tech』、通称ReTechの分野で、創業わずか4年半で売上100億円規模まで急成長中のベンチャー。中古不動産流通プラットフォーム「Renosy」などを提供している。そんなGA technologies代表取締役社長 樋口 龍氏に、起業家に必要な素養、組織作りなどについて聞いた。(全6話)

3回の失敗から成功にたどり着く

——今のビジネスモデルに行きつくまでにどのような試行錯誤があったのでしょうか?

私は、何事も3回は失敗するものだと思っています。事業も3回ぐらい失敗しながら今のビジネスモデルに行きついています。

例えば、起業した当初は、ホームステイのマッチングビジネスにチャレンジしました。Airbnbは住人がいない時に家を借りてもらうサービスですが、ホームステイは住人がいることがメインです。その新規性が面白いのではないかと思いましたが、これは全くうまくいきませんでした。このホームステイのマッチングビジネスの失敗など、新規事業の失敗を2013年~2014年にかけて3つほどした後、やっと今の形になりました。

 

——失敗した事業と今の事業を比較するとどのような違いがありますでしょうか?

私は、Yコンビネーターの創業者・ポール・グレアムさんを尊敬しているのですが、その方がおっしゃっていたことがすごくしっくりきています。それは、「新規事業を成功させるためには、プロダクトアウトじゃなくて、マーケットインだ」ということです。アイデアを探しているうちは駄目で、目の前にある問題をソリューションしろということです。

私は、自分が課題を感じていないことに対して、アイデアを出して、新規事業をひねり出そうとしていました。これはうまくいかない典型的なパターンです。いかにクリエイティブな発想を出すか、いかにいいアイデアを思いつくか、ということばかり考えていました。「プロダクトアウトでクリエイティブさを求める必要はなかったな……」と今になって思います。

その反省を生かして、今はとにかくマーケットインでやっています。不動産業界にも、目の前の業務に課題はたくさんあります。課題解決型のソリューションに切り替えたところ、物事が進みだしました。

職種、国籍を超えた組織マネジメントの本質

——御社には、セールスの方だけでなくエンジニアの方が3割いらっしゃるという話を伺いました。多様な人材をマネジメントするために工夫していることをお聞かせください。

多様な人材ということで考えると、前職では、中国の方を5人マネジメントした経験があります。日本語もままならない方たちでした。

私は、自分の長所はマネジメントだと思っていますので、さまざまな職種や人種、国籍の方をまとめていける組織にしたいと考えています。そのためには、宗教上の違いなどは考慮していく必要はありますが、それ以外に関しては基本的にすべての方に対してスタンスを変えないことがとても大事だと思っています。どの国の人であっても、駄目なものは駄目、良いものは良い。人間として向き合うことが非常に重要だと思います。性別に関しても同じことがいえるのではないでしょうか。ケアしなければいけないことはありますが、女性メンバーだからと気を遣いすぎてしまうと逆にうまくいかないと考えています。

人としてちゃんと向き合う。伝えるべきところはきちんと伝える。誰に対しても変わらないマネジメントスタイルが非常に重要です。ケアは必要ですが、そこに本質はありません。

 

——人間として向き合うこと、確かに大切ですね。具体的に取り組まれていることはありますか?

多くの企業も取り入れていますが、週1回、マネージャー陣とは1on1をしています。しかしながら、組織が大きくなるにつれてマネージャーとだけ1on1をしていても、その話が本質かはわかりません。そのため、マネジメントされているメンバーと飲みに行くなど現場の話を聞くこともあります。また、毎週1回全メンバーを集めて朝会をしています。そこでは、各部門が進捗、戦略を発表して、私は総括を話す。こうして全員とのコミュニケーション機会を増やしています。

「なぜこの制度が重要なのか」「なぜ新規事業をするのか」「なぜメンバーを増やしたのか」「なぜテクノロジービジネスをしているのか」といった価値観の話をよくしています。こうしたコミュニケーションの機会はチームビルディングのために非常に重きを置いています。

——マネジメントにおいて会社の「成長痛」をどのように乗り越えてこられましたか?

創業当時のメンバーは能力が高いかというと、そうでもないことも多いです。会社が成長後に入ってきた人達の方が優秀なことはよくあります。そうすると、後から入社してきた人達と創業時のメンバーとの間に軋轢、嫉妬が生まれます。これには、擦りこみを続けるしかないと思っています。「優秀な人が入ってくるのは自分のためになるんだ」と理解してもらえるようにコミュニケーションを取り続けています。

優秀な人が入ってくれれば、その人から学べる。ちゃんと学習していけば、追いつけるかもしれません。対して、同じレベルの人が入ってきてその中で部長になれたとしても、世の中の基準に照らして会社のレベルが低ければ、誰からも注目されない企業になる。「そんな会社の部長をやっていて嬉しいのか」と投げかけるんです。

それよりも、優秀な人が入って会社が発展した方が会社も注目され、自分も成長できますよね。こうした話を伝え続け、徐々に受け入れてもらえるように気をつけています。

 

——セールスとエンジニアという文化の異なる組織をマネジメントする上では何がポイントとお考えでしょうか?

総合職とエンジニアが半々みたいな会社だと、エンジニア職とセールス職を分けて仕事をしていると言われますよね。しかし、我々のビジネスはマーケットインの考えが不可欠で、不動産の課題に対してどうテクノロジーを使っていくかという話です。ゆえに、エンジニア職とセールス職を分けることは得策ではないと考えています。実際に、セールスとエンジニアが、同じフロアで仕事をしています。しかし、以前は、専門性が違うということで、なかなかお互いにコミュニケーションを取ろうとしませんでした。

例えば、セールス側の人間に、「ちょっとこのプロダクトを使って意見を聞かせて」といっても、全然出てこないんです。しかし、それで諦めるわけにはいきません。諦めずに接点を作っていったら、セールスからも「これは使いやすいと思います」「こっちの方がいいです」といった意見がでるようになりました。

また、エンジニアは、ユーザー思考よりも自分の作りたいものを作る傾向があります。「ユーザーに聞きに行こう」といっても聞きにいかない。これについても諦めずに働きかけていたら、最近では、セールス側に「ユーザーの所に連れていってくれ」と言うようになってきました。

現在は、セールスとエンジニアが一緒に訪問して、ユーザーヒアリングを実施しています。

 

 ——文化や専門性が異なるセールスとエンジニアの壁を、対話量で崩していったんですね。

そうですね。おかげで、エンジニアなのに宅建に受かったメンバーが5人も出てきています。取得するようにとは言っていないのですが、コミュニケーションを大事にした結果、セールスやユーザーの意識に添えるように宅建を取ろうという思考になったのだと思います。

 

 

>第6話「Re Tech領域No.1、そして世界的企業へ」に続く

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筆者 下平 将人

筆者 下平 将人

筆者 下平 将人

法律事務所、LINE株式会社の社内弁護士(リーガルカウンセル)、新規事業開発を経てDIに参画。DIでは、ベンチャー投資、投資先の経営支援に取り組み、投資先企業の社外取締役等を務める。東京弁護士会所属弁護士。Arts and Lawに所属しクリエーターの無料法律相談を担当。チャレンジングな事業領域に挑戦する起業家と汗をかき、共に理想を追い求め続ける存在でありたい。

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