FinTechの雄が語る「起業家に必要な素養」 マネーフォワード 辻CEO(第1話)

志と情熱を筋トレのように育む

——辻さんが考える、起業家にとって必要な素養を3つ教えてください。

最も重要なのが「志」だと思います。そして、志を貫きたいという「パッション」とその事業を最後までやり抜くという不退転の「覚悟」の3つが起業家にとって必要な素養だと思っています。

起業は、確率論だけでいうとだいたい失敗します。起業においては失敗がつきものなので、非常に大変なことが多い。通常の理屈で考えると、起業なんてしない方が良いとさえ言えるわけです。

しかし、「世の中をこうしたい」「世の中のこういう不条理・不合理さをなくしたい」といった「志」さえあれば、失敗の可能性が非常に高いとわかっていながらも突き進むことができる。

そして、志に対する「パッション」と最後までやり抜くという「覚悟」あれば、事業を続けていくことができるのだと思います。起業した後、諦めたくなるようなポイントは山ほどあるので、最後までやりとげる本物の「覚悟」があるかどうかはすごく重要です。

上場した今でも、トップとしての「覚悟」の持ち様については社内外から見計られているな、と日々感じています。

マネーフォワード代表取締役 辻庸介。1976年大阪府生まれ。 京都大学農学部を卒業後、ソニー株式会社に入社。2004年にマネックス証券に出向し、その後転籍。2009年ペンシルバニア大学ウォートン校にMBA留学。卒業時には、全12クラス中、アメリカ人以外で唯一のCohort Marshall(クラス代表)に選出。帰国後COO補佐、マーケティング部長を経て、2012年に株式会社マネーフォワードを設立。代表取締役社長CEOに就任。新経済連盟の幹事、経済産業省 FinTech 検討会合の委員。

——多くの方にとって、自分の中に眠っている「志」や本当にこれがやりたいという「パッション」を見つけ出すことは難しいのではないかと思います。どうすれば、自分の中にある「志」や「パッション」に辿り着くことができるのでしょうか。

「志」や「パッション」を最初から持ち合わせている人は少ないかもしれませんね。自ら世間に対して積極的に情報を発信し、他の人とコミュニケーションを取りながら、自身のパッションと志を育てていくことが重要ではないかと思います。

起業して思うのは、日々、「志」や「パッション」を鍛える筋トレをしているなということです。自分が上げられないバーベルに向かって、ひたすら踏ん張って上げようと挑み続けている(笑)。

最初は全く上がりませんが、毎日必死に鍛錬を積むと、徐々に筋肉がついていき、ちょっとずつ上げられるようになっていくものです。「志」と「パッション」はそうして培われていくものだと思います。結果的に、私の周囲の経営者の方々は、高い「志」と圧倒的な「パッション」をお持ちですね。

上場はプロ野球リーグ入り

——とはいえ、「志」と「パッション」を最後まで貫き通すことは、かなり難しいことだと思います。辻さんが志を貫きとおせている理由や逆境を克服できたポイントがあれば教えてください。

日々折れそうな心と戦っていますよ(笑)。起業した頃から自分のスタンスはあまり変わっていませんが、視座を常に高く持つことが大事だと思っています。

何のためにマネーフォワードという会社があるのか、そのミッションやビジョン、そしてバリューみたいなものを創業以来ずっと大切にしてきました。この会社を通して、社会にどう役に立つかを突き詰めていくと、上場もスタートラインに立ったに過ぎないんですよね。

——上場についてのお考えをもう少し詳しくお聞かせください。

最近思うのは、上場とは、プロ野球リーグにやっと入れたような感覚に似ています。私の横にはユニクロの柳井正さんとか、ソフトバンクグループの孫正義さん、日本電産の永守重信さんなどがいらっしゃり、すさまじい勢いでホームランを打っている。

一方で、自分のボールはめっちゃくちゃ遅い。かなりのレベルの差がありますね。その圧倒的な力の差を感じながら、今は1年目のルーキーみたいなワクワク感もあるんです。

環境こそが人の成長を決める

——辻さんはソニーで働いた後、マネックス証券に出向、転籍され、MBA取得後、起業されています。常に自分の「志」を高く持ち、スキルを高めるために意識されていると思いますが、どうしたらそのような高いモチベーションを維持できるのでしょうか?

常に恐怖心があるからですね。成長曲線を描き続けるには、「寝たらヤバい」みたいな気持ちはすごくあります。

サボり癖があるんで、基本的に自分でやれないんですよ。だから、やらざるを得ない環境に身をおこうと決めています。行き当たりばったりなので、そんな立派なものでもないんです(笑)。

強いて言うならば、環境は選ばないといけないと思っています。成長している人は、すごくいい環境に自分の身をおけている。周りに恵まれているということなんです。

自分にとって良い環境を見極めて意思決定するのは非常に難しいことだと思いますが、環境に恵まれてないなと思う場合は、どうするか考えなければいけないんです。「石の上にも三年」は重要なことですが、一方で「本当にそこに三年いていいのか?」みたいな視点も重要だと思いますね。

 

 

>>2話目「背水の陣の覚悟こそが道を切り開く」に続く

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筆者 下平 将人

筆者 下平 将人

筆者 下平 将人

法律事務所、LINE株式会社の社内弁護士(リーガルカウンセル)、新規事業開発を経てDIに参画。DIでは、ベンチャー投資、投資先の経営支援に取り組み、投資先企業の社外取締役等を務める。東京弁護士会所属弁護士。Arts and Lawに所属しクリエーターの無料法律相談を担当。チャレンジングな事業領域に挑戦する起業家と汗をかき、共に理想を追い求め続ける存在でありたい。

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