「メイドインジャパン」復活の希望の星 ライフスタイルアクセント 山田CEO(第1話)

インタビュー|2017.08.18

「日本の工場から、世界一流のブランドを作る」というビジョンに基づき、代表取締役自らが直接足を運んで厳選した工場と顧客とをECで直接繋ぐファッションブランド「ファクトリエ」。同ブランドを生み出し、ものづくりのあり方を変えようとするライフスタイルアクセント株式会社代表取締役・山田敏夫氏に、社会的価値を生み出す起業について聞いた。(全6話)

「視座の高さ」から生まれる応援団の輪

――起業家にとって大事な3つの素養を挙げるとすれば何でしょう?

「視座の高さ」「巻き込み力」「エンジン」じゃないでしょうか。

――なるほど。一つ目に「視座の高さ」がくるのは山田さんらしいなと思います。

「視座を高く持てるか」というのは、「地球規模で考えてアクションができるか」ということに言い換えられると思います。

例えば、我々が作る服はできるだけオーガニックコットンを使うようにしているんですが、それは何故かというと、途上国のコットン事業従事者が枯れ葉剤の影響で年間約4万人以上亡くなっているという事実があるからなんですね。おまけに児童をたった時給13セント(約15円)という法外な賃金で働かせている。そんな悲惨な事実の上に成り立っているビジネスなのに、日本に供給されている年間40億着の服の約半分が、袖を通さずに捨てられているんです。これって地球規模で考えるとあまりに負のサイクルですよね。

1982年熊本県生まれ。大学在学中、フランスへ留学しグッチ・パリ店で勤務。卒業後、ソフトバンク・ヒューマンキャピタル株式会社へ入社。2010年に東京ガールズコレクションの公式通販サイトを運営する株式会社ファッションウォーカー(現:株式会社ファッション・コ・ラボ)へ転職し、社長直轄の事業開発部にて、最先端のファッションビジネスを経験。2012年、ライフスタイルアクセント株式会社を設立。2014年中小企業基盤整備機構と日経BP社との連携事業「新ジャパンメイド企画」審査員に就任。2015年経済産業省「平成26年度製造基盤技術実態等調査事業(我が国繊維産地企業の商品開発・販路開拓の在り方に関する調査事業)」を受託。年間訪れるモノづくりの現場は100を超える。

出来るだけ安く作って大量に売ること。これは資本主義として「正しいこと」とされていて、供給が過剰になっているのにも関わらず、なにも考えずに同じことを「正しい」と信じてやり続けている人が多い。その思考停止が起こるのは、視座が高くないからだと思うんです。

視座を上がると「他者への愛」が自然に生まれてきます。視座さえ高ければ、必然的に負のサイクルを止めようと考えるはずなんです。

例え話をすると、私は熊本出身で東京に出てくるときに「必ず熊本に帰ってきてね!」とたくさんの人から言われました。東京に出た方が客観的に熊本の課題が広い視点から考えられるようになるから良い事なはずなのに、多くの人は自分の視座の高さで居続けようとする。

現状に安住せずに、「視座を上げられるか」が起業家に必要な素養だと思います。

起業家として「自分が儲けたいから応援してください」なのか、「地球規模でこういうアクションをとることが、世界にとっていいことなんだ」と視座高く訴えるのか次第で、次の素養である「巻き込み力」の強さが変わってきます。

――なるほど。山田さんは視座が高いからこそ、多くの人を巻き込むことができている。

「ファクトリエ」では、世界に誇れる国内の一流工場で作られたこだわりの服を、インターネットを通じてお客様に直接お届けしていて、既に約50の工場と提携させていただいています。

全てメイドインジャパン、それぞれの商品にアパレル工場の名を冠した工場直結ファッションブランドです。この中間業者を排除して工場と消費者を直接繋ぐ仕組みによって、無くなりゆくメイドインジャパンの文化を守りたいと考えています。

おかげさまで日本のみならず、海外にもファンがたくさんいらっしゃったり、政府関係者の方が見学に来てくださったりしています。それはなぜかというと、資本主義という名で各国で失われかけている「ものづくり文化」を守るための、最後の希望の手法のひとつだと思っていただいているからなんです。

たとえば、フランスのレース編みは同国で一番の伝統工芸で、取り扱っている店は何万軒もあったのに、今やもう数軒しかないんですよ。これが失われたら、彼らの文化がなくなってしまう訳です。我々が地球規模で考えてアクションしているからこそ、「日本では『ファクトリエ』というブランドのおかげでものづくり文化がちゃんと残りそうだ」と興味を持ってくれています。

我々は、今のファクトリエを作るためにどういった課題に直面してきたか、というのを全てオープンにしています。そうやって高い視座を持って情報発信するからこそ、たくさんの応援団を巻き込み続けていく力に繋がっているのだと思います。

最後に、3つ目の素養である「エンジン」は、継続するための原動力です。

エンジンは人それぞれで、どんなものでも構いません。ただ、腹の底からあふれ出るエンジンであることが重要です。

エンジンは壁にぶつかった時に、その壁の高さを決めます。同じ壁を高いと感じるか、それとも低いと感じるかはエンジン次第ということです。腹の底から本気で夢中になって挑戦している人って、普通ならぶつかるような壁もいつの間にか越えちゃってたりしているじゃないですか。

そのような長く挑戦し続けられるエンジンを持つことが起業家には必要だと思います。

視座を上げる「人」と「本」との出会い

――高い視座を持つことで人を巻き込んでいき、パワフルなエンジンによってそれを継続し続けていく……。ただ、視座が上がっていない人からすると、逆に「どうやって上げたらいいんだろう?」と迷うのではないかと思います。視座の高さを上げるには、具体的にはどうすればよいのでしょうか?

「人と会うこと」と「本を読むこと」の2つしかないのではないでしょうか。

人と会うといっても同僚とか友達ということではなくて、新しく人と出会わないと、どんどん世界が狭く、視座が低くなります。

例えば居酒屋で隣に座ったおじさんに話しかけるだけでも、世界が広がることがあります。もし隣の人に話しかけたりするのが苦手だったら、海外旅行に行った時に、全てをガイドブックに頼るんじゃなくて「レストラン一軒くらいは自分で探す」と決めるのもいいと思います。あるいは、Facebookを見ていると、毎日色んなイベントが山のようにあるのでそこに参加してみるでもいいんです。何でもいいんです。とにかく一歩踏み出して、いろんな人と会って視野を広げることが大切です。

「本を読む」というのも人と出会っているのと同じです。本を通して昔の坂本龍馬に会ったり、経営者の思想に触れたりすることができますよね。

簡単なことからでいいので、一歩踏み出して、外の世界の人と話して触れ合うことから始めれば、視座は高まっていくんじゃないかなと思います。

――御社のHPを見ていると、工場の人から著名人まで、様々な人との繋がりを継続的に紡いでいると感じます。人を巻き込み、そしてその関係を長く保ち続けるために気を付けていることはありますか?

それはすごいシンプルなことから始まると思います。たとえば「挨拶をする」「嘘をつかない」「約束を守る」。こういった基本的なことを誰に対してもオープンでありフェアにやり続けることが重要だと思います。

そのうえで、有名無名や専門領域は関係なく、リスクをとって夢にチャレンジしているような人とは積極的に繋がり続けるようにしています。

例えば先日、オリンピック種目に選ばれたサーフィンの日本代表強化指定選手になった18歳の男の子に出会ったのですが、彼は大学進学を辞退してでもサーフィンに懸けたいと言っていました。周りはみんな大学に進学していくのに凄いですよね。そういった「振れ幅の大きい」人生に挑戦している人同士は、共感しあえる部分が多いと思っています。

我々は国内のアパレル縫製工場で働いている人口が30万人まで減少している中、その人数をある水準まで増やすという目標をもっていますが、自分だけの力ではそれを達成することはできません。もちろん、自分たちの業界については誰よりも我々が真剣に考えている自負はありますが、他の領域にもプロフェッショナルがそれぞれたくさんいます。社会のためにリスクをとってチャレンジしているそのような人々との輪が、最終的に我々のミッション達成や社会を変えるエンジンになると思っています。

 

>第2話 「400枚のシャツから始まった『正の経済圏』の伝播」に続く(8月25日頃公開予定)

>>ファクトリエ公式HPはこちら

著者 小縣 拓馬

著者 小縣 拓馬

起業家向けメディア「ベンチャーナビ」 編集長。玩具会社のタカラトミーを経てDIに参画。ビジネスプロデューサーとして、主に国内ベンチャーへの投資・事業支援・戦略立案を担当。     ~「More than Meets the Eye」 これは玩具会社時代に担当していたトランスフォーマーというシリーズの代表的なコピーです。見た目だけではわからない、物事の本質に焦点を当てること。そんな想いで記事を提供していきたいと思っています。~

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