100年続く世界ブランドへの道のり ライフスタイルアクセント 山田CEO(第5話)

インタビュー|2017.09.15

「日本の工場から、世界一流のブランドを作る」というビジョンに基づき、山田氏自らが直接足を運んで厳選した工場と顧客とを直接繋ぐファッションブランド「ファクトリエ」。同ブランドを生み出し、ものづくりのあり方を変えようとするライフスタイルアクセント株式会社代表取締役・山田敏夫氏に、社会的価値を生み出す起業について聞いた。(全6話)

正しい道を歩む勇気を持つ

――「事業と社会性のバランスを保てるか」というテーマについてはどうお考えでしょうか?

私は、事業と社会性は両立できると考えています。そのためには、事業の中に社会性を組み込むことが大切です。事業が上手くいけばいくほど、社会が良くなっていくということですから。

たとえば、アパレル会社のパタゴニアは、全てのコットン製品にオーガニックコットンを使用して社会を良くしながらも事業成長しています。

ナイキはそんなパタゴニアを真似してコットン製品のうち1%をオーガニックコットンに変えたんですね。そしたら、それだけでオーガニックコットンを使用した衣類の総生産量がパタゴニアを超えてしまった。パタゴニアが作り出した社会価値の高い流れに対して追随するプレーヤーが現れ、結果的に社会がプラスの方向に動いていった事例です。

ビジネスにおいて模倣は当然なので、社会的にいいことをすることで事業成長している企業があれば、みんな右に倣えで真似するんですよ。

我々の行動指針には「正しい道を歩む勇気を持つ」というものがありますが、それに従って道を切り開き事業成長している限り、我々を真似するプレーヤーも現れ、社会は良くなっていくと思っています。

――御社のビジネスモデルを模倣するのはなかなか難しいような気がするのですが……。

そんなことないですよ。我々が提携している工場の名前や住所は全てHP上で公開してますし。

ただひとつ言えるとすれば、人間って昔の不便さには戻れないんですよね。

これだけGoogleであらゆる情報が簡単に手に入る時代に、私のようにいちいち最寄り駅でタウンページをめくって工場の電話番号を調べて訪問するような泥臭いやり方はできないんじゃないかと思います。そういう泥臭さは我々の競合優位性になるのかもしれません。

とはいえ我々は情報をオープンにしていますし、どんどん真似をしてもらいたいと思っています。そんな真似される中でも、自分達が常に価値を作り続け、価値あるものであり続けることが大事だと思います。

100年続くブランドをつくる通過点としての「上場」の意義

――そういう意味では、上場についても気になります。「四方よし」が大前提だとおっしゃいました(第3話リンク)が、ここに5番目の「株主」が登場した時、社会性を毀損するような、短期的な事業性だけを見てくる人も出てくるのではないかと思います。その辺をどう考えておられますか?

私は上場ありきでは考えていません。上場するにしろしないにしろ、「100年続くようなブランドを作っていく」ことが目標です。なので上場するとしてもそれは通過点に過ぎなくて、我々の目標にとってなぜ上場が必要なのかを考えなくてはなりません。

我々のようなBtoCのビジネスモデルは、上場していなくてもある程度知名度が作れます。なので「採用のために」「知名度のために」という理由は当てはまりません。

もしそれでも上場する理由があるとしたら、2つの可能性があると考えています。

1つ目は、「ものづくり業界における希望の星」として、きちんとした社会的立ち位置から発信できること。

いま縫製以外の国内産業、例えば林業や工業なども、儲からずに縮小の一途をたどっています。そんな産業の方々にとって、「正しいことをして儲かっている人がいる」と希望の存在になることは有意義だと考えています。

2つ目は、我々のチャレンジにおいて、大きな投資が必要になったタイミングでの資金獲得手段として利用するということ。

投資が必要となる例を挙げるなら、「もう提携工場がにっちもさっちもいかないので、我々が資金を何とか工面してあげないといけない」などです。

上場のさせ方にも工夫の余地があると思っています。

例えばエルメスの上場の仕方をご存知ですか?株式発行数を非常に少なくしていますし、株主が短期的な視点で意見を言っても「自分達のやり方を貫く」ことを決めています。

「上場」って言葉だけ見るとマネーゲームのように見えますけれど、エルメスのような上場のさせ方を参考にしたり、ファクトリエの理念に共感してくださる方に株主になってもらうこともできます。そうすれば、上場をしたとしても社会的地位を示したり、きちんと我々の独自性を保ったりすることはできると思っています。

なので、私は上場に対してはすごくフラットに考えていますし、あくまで目標達成のためのひとつの手段、通過点と捉えていますね。

共感の連鎖を生む「全員広報」の精神

――先ほど「認知度は上げられる」とおっしゃいましたが、御社はマーケティングが非常に上手いという印象を持っております。他のベンチャー企業が、何か真似できるところはあるのでしょうか?

これは冒頭にお話しした社員全員の「視座の高さ」からくる「巻き込み力」のおかげだと思います(第1話リンク)。

たとえば採用の話が持ち上がったら、私だけじゃなくメンバーみんな、友達に連絡したりシェアしたりしてくれます。

「正の経済圏」を世の中に作っていく上で、社員全員が広報であり、アンバサダーであり、代表なんですね。1人1人が家族や友人に対しても雄弁にファクトリエの魅力について語ってくれていることが、上手くいっている秘訣だと思います。

例えば、今年連載20周年を迎える「ONE PIECE」とのコラボアイテムを、作者の尾田栄一郎さんが熊本出身だということで発売したんです。この時も、弊社の社員の親戚がたまたま集英社で働いていて、そこからコラボ実現に繋げてくれたんですよ。

メディアに露出する方法はテクニック論としていろいろあると思いますが、本当の共感が生まれない限りは、おそらく一過性で終わってしまいます。我々も、普通の宣伝だけしていたらただの服屋ですよね(笑)。

でも、会社それぞれに個性や人格があって、それを伝えようとするメンバーがいて、だからこそ何かしら違う色に見えるわけです。

私が何か特別なことをしているのではなく、社員全員がどういう世界にしたいのか、それがどうファクトリエと繋がっているのか、ということを周囲に伝えてくれていることがマーケティングで成功している理由の本質だと思います。

 

第6話「リスクをとって『この指止まれ』から始めよう」に続く

>>ファクトリエ公式HPはこちら

 

■山田CEOバックナンバー

第1話 「メイドインジャパン」復活の希望の星

第2話 400枚のシャツから始まった「正の経済圏」の伝播

第3話 本物のブランドをつくる唯一の方法とは

第4話 「決して志がブレることのない組織の作り方」

著者 小縣 拓馬

著者 小縣 拓馬

起業家向けメディア「ベンチャーナビ」 編集長。玩具会社のタカラトミーを経てDIに参画。ビジネスプロデューサーとして、主に国内ベンチャーへの投資・事業支援・戦略立案を担当。     ~「More than Meets the Eye」 これは玩具会社時代に担当していたトランスフォーマーというシリーズの代表的なコピーです。見た目だけではわからない、物事の本質に焦点を当てること。そんな想いで記事を提供していきたいと思っています。~

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