本当に事業に役立つ経営理念の作り方 面白法人カヤック 柳澤CEO(第3話)

インタビュー|2017.10.03

「日本的面白コンテンツ事業」を業務内容として掲げ、ソーシャルゲーム事業、ゲーム音楽事業、ウェディング事業、葬儀事業など、多岐にわたるビジネスで話題を呼び続けている「面白法人カヤック」こと株式会社カヤック。同社CEO・柳澤大輔氏に起業家としての心構えや、ベンチャー企業の組織づくりについて聞いた。(全5話)

役に立つ経営理念を作るには「見直し」「振り返り」が不可欠

――御社は経営理念を非常に大切にされている印象です。「これから経営理念を考えたい」というベンチャー企業は、どういう点に注意して作るべきでしょうか?

注意すべき点は2つです。

まず、「経営理念は毎年見直した方がいい」ということ。初めからいきなり凄く使える経営理念はできません。

「こういう会社や変化、社会を作りたい」という理想に対して物差しになるのが経営理念なので、使えない経営理念、即ち「なんとなく言っているけれど、何の役にも立たない経営理念」だと何の意味もないんです。

我々も「面白法人」は創業時にぱっと出したんですが、経営理念は何度も何度も見直して、6、7年経ってやっと今の形になりました。だから「見直す」という覚悟でやった方がいいかなと思います。

2つ目は、「困った時に役に立ったか」を振り返るということです。

「困った時に、理念を思い出して乗り切れた体験」が出てこないような経営理念は、多分あまり役に立っていません。事業をどう進めていくべきか迷った時に理念を思い出して、「ああ、理念に従えばこの事業は進めるべきなんだ」という風に役立てられるものでないと意味がありません。なので、そのような役に立っていない理念は何度でも変えた方がいいと思いますね。

――「経営理念が役に立っているかどうか」という視点は新鮮です。御社の経営理念は「つくる人を増やす」ですが、その理念に関しても、今でも振り返りをしておられるのでしょうか?

我々は評価に必ず入れていますし、全員で振り返るようにしています。

「つくる人を増やす」を作って10年ぐらい経つので、そろそろ古くなってきて見直せと言われるんですが(笑)。もしかしたら次の経営者にバトンタッチする時にそれも託すのかもしれません。時代とともにきっと変わるでしょうから。

――急成長して上場に至る10年間の様々な局面の中では、この理念が役に立ってきたのだと思います。今後、会社としてのフェーズの変化に伴って、理念の変化の必要性を感じている部分はありますか?

現状だと、なかなかこれ以上のものが見つからないのが正直な所ですね。

あえて言うならば、「増やす」という言葉は変えてもいいのかもしれないと思うときもあります。

会社は普通「会社を大きくする」ことにプライオリティーが置かれている訳ですが、我々のようなクリエイター中心の会社は、規模を大きくすることよりも研究者やアーティストのように「まだ誰も見たことがないものを発見すること」にプライオリティを置きがちです。なので、会社を成長させる意識付けのためにも、あえて「増やす」という言葉を入れているんです。

しかしながら、現在は上場も経て、昔と比べて色々な職種の人が増えてきています。なので、ことさら意識しなくても「会社を大きくする」というメカニズムに燃える人達が増えてきているんですよね。

ですから、「増やす」という言葉の必要性に変化が来ているのかもしれません。例えば、「つくる人を『つくる』」だと昔は成長への意識付けが弱かったのですが、今なら十分機能するかもしれません。

――一言一言、言葉の使い方に徹底的に拘っておられるんですね。

「増やす」という言葉があると、いくつかの選択肢で迷った時に「つくる人が増える」方を選ぼうとしますよね。このように、常に理念が役に立っているのか、振り返り続けることが重要です。

価値観を共有する「シンボリックなルール」の効能

――会社が大きくなってくると、そうやって理念を見直すだけではなく、経営者として組織を管理したいという思いが出てくるのではないかと思います。特に御社は自由を重視されているので、その分葛藤が大きいのではないかと。その辺りは、どのようにして乗り越えておられますか?

まず話の前提として、「自由」というのは物理的な話ではなく視点の話です。

どういうことかというと、たとえば学生が校則で「茶髪禁止」と言われ、それに反発して茶髪で登校してきたとして、その子が「自由」かというと、むしろよっぽど不自由な感じがしませんか?逆に、自然と校則を守れる人って「自由」だな、と思うのではないでしょうか。

自由かどうかというのは、つまりは視点の柔軟性なんですよね。それぞれの考え方を認めた上で、自分がどう行動するか、ということを大切にしています。

それを踏まえた上で、組織として集まる以上何らかの共通のルールが必要になってきます。できるだけ少ないほうがいいとは思うんですが、人が増えるにつれてルールが増えるのは仕方ありません。

その中で大切にしているのは、「シンボリックなルール」を作るということですね。そこがちょっと他の会社と違うところかもしれません。

――「シンボリックなルール」ですか?

大組織になると、昔はルールで決めなくても感覚で伝わっていた大切なことが伝わらなくなったりします。そういった大事な価値観を伝えるために「シンボリックなルール」を活用しています。これは、ルールが実際に使われていなくても、「そういうルールがある」と伝わることに意味があります。

例えば、サイコロを振って給与を決める「サイコロ給」も、極論誰も振らなくたっていいんです(笑)。社長だけがサイコロを振っていても、そのルールに込められた価値観は十分伝わるでしょうから。

――サイコロ給の場合、「給与に対しても柔軟な視点を持とう」という価値観の伝播がルールを作る目的で、決してルールを徹底することが目的では無いということですね。

そうです。そして「何でこんなルールがあるのか」を考えてもらう。

ルールの案は基本的には人事部が主導で出すんですが、社員全員で考案したりすることもあります。ルールの持つ意味を考えるプロセスを重視しています。

とはいえ、状況に応じてルールが必要なくなる時もありますし、形骸化してしまう時もあります。新しいルールを作ってみないと分からなくて、定着しないことだって少なくありません。

――柳澤さんの中で、「こうなったら続けろ」「こうなったらやめろ」というルールの撤退基準はあるんでしょうか?

ルールを考えている側も、自分で自分の本当にやりたいことが分かっていないということがあるんですよね。「みんなやりたがらないからしょうがないな」と自然消滅していく程度のルールだったら、それはつまり自分もそこまでやりたくなかったってことだと思います。もし経営者が必要だと本気で思うなら、やり続けるべきだと思います。

ただし、社員との対話を通してやりたいこと、大切にしていることが変化してくるものなので、まずは挑戦してみるしかないのではないでしょうか。

 

第4話 「『なにをするかよりも誰とするか』を徹底する方法」に続く

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著者 小縣 拓馬

著者 小縣 拓馬

起業家向けメディア「ベンチャーナビ」 編集長。玩具会社のタカラトミーを経てDIに参画。ビジネスプロデューサーとして、主に国内ベンチャーへの投資・事業支援・戦略立案を担当。     ~「More than Meets the Eye」 これは玩具会社時代に担当していたトランスフォーマーというシリーズの代表的なコピーです。見た目だけではわからない、物事の本質に焦点を当てること。そんな想いで記事を提供していきたいと思っています。~

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