Bean to Barの先駆者が語る、愛されるブランドつくりの要諦 Minimal(株式会社βace) 山下代表(第4話)

2018.01.30

新たなスタイルのチョコレート「Bean to Bar」専門ブランドの先駆けとして脚光を浴びている「Minimal -Bean to Bar Chocolate-」。全くの門外漢だった株式会社βace 代表取締役・山下貴嗣氏が2014年に立ち上げたブランドながら、世界的なチョコレート品評会で日本初の金賞を受賞している。短期間で商品のクオリティだけでなく、一流ブランドを作り上げた山下氏にブランド作りの秘訣や組織づくりについて伺った。(全6話)

こういう時代だからこそ、正直に商売をすることが一番

──御社はブランドのつくり方において、ひとつの新しい成功例を作っておられるという印象です。自社ブランドのファンを増やすコツなどはありますか?

まず、ベースは正直に商売をすることだと思います。

一時的に話題になって、1年くらいで消えてしまうブランドってあるじゃないですか。もちろん流行り廃りはあると思うんですが、私はやっぱりそれはハリボテだと感じています。

要は、ハリボテではなく、ブランドの奥行きを作っていくために真面目に活動しないといけないんです。

例えば、3話(リンク)で「三方良し」と言いましたが、そう口にしておきながら作り手のところ(農家)に行ったことがない……というような話が意外とあるように思うんですよ。

そうではなく、すべてのステイクホルダーとWin-Winの関係を築いていくことに真摯に取り組むブランドだけが、背景にストーリーを持つことが出来、ファンつくりをより加速させることが出来ると思います。

現在はITツールによって情報がフラットになっているので、誰でも欲しい情報にリーチすることができます。そうすると、自分の利益だけを考えているような企業は一発でバレると思うんですよね。お客様にいずれ見向きもされなくなる。

こういう時代だからこそ、真面目に、正直に、ファンとの関係を作っていくことが大切です。

「クレイジー」と言われた出店戦略の裏にある想い

──ブランドのストーリーテリングとよく言われていますが、お客様に価値を伝える際に、どういった順序で考えていけばよいのでしょうか?

私は「ストーリーの伝え方を考える前に、伝えるストーリーはありますか?」という問いを立てることがブランドを運営する上で重要だと思っています。

そして、先ほど述べたように真面目に商売していたら、伝えられるストーリーは必ず出来てくるはずなんですよ。熱のあるストーリーさえあれば、あとの伝え方の部分はテクニック論だったりします。

我々の場合は、購買だけでなく、お客様の消費体験におけるカスタマージャーニーマップを作成し、店舗の設計などに活かしています。

1話(リンク)でお話した通り、我々は最初「一等地の中の三等地」に出店しています。

これって小売の出店セオリーからするとダメで、実際「こんな住宅街しかないところに店舗を出すなんてクレイジーだ」とさえ言われていました。

でも私は「ブランドの立ち上げ当初は1時間に100人入ってもらうより、10人でいいからちゃんと我々の話を10分ゆっくりと聞いてくれる人をとりたい」と思ったんですね。

なぜならばブランドって、私たちがどう伝えるかというよりは、私たちから聞いた話を、お客様がいかに語り継いでくれるかが重要だと思うんですよ。我々が100人相手に喋るより、話を聞いた10人が同じ熱量を持って1人2人に話してくれる方が絶対早い。

なのでMinimalでは、そういった語り継がれるようなストーリーを、お客様の導線のどこに置くかといったカスタマージャーニーマップをもとに、すべてのアウトプットを設計しています。

ブランドストーリーが伝播されていく、緻密な仕掛け

──導線と言いますと具体的にどのようなことでしょうか。

例えば、富ヶ谷店の場合、店の中が全部カウンターになっていて、裏側に工房がついているんです。

普通、工房つき店舗だと工房を前面に押し出したりすることが多いですよね。でもMinimalの場合は、お客様が何か気づいたらすぐに店員と会話できるようにすることを重要視しているので、そういった店舗設計にしています。

加えて、試食を全種フリーにしています。

これも理由があって、試食を1個食べるよりは2個食べる、2個食べるよりは3個食べる……という風に、お客様の滞留時間を長くすることができますよね。そうすると、より我々のブランドを知っていただく機会を増やすことができます。

チョコレートのパッケージには産地の情報とレシピを載せています。

そうすると、帰宅してから「あ、チョコの原材料のカカオ豆って赤道直下の国々でとれるんだ」と気になりますよね。それを糸口にしてMinimalのHPを検索していただいてもいいですし、また次の来店時に聞いていただいてもOK。

ブランド運営の要素まとめると、まずは自分たちのブランドの伝えるべきストーリーをたくさん見つけること。次に、そのストーリーにお客様が興味を持つきっかけをデザインして、カスタマージャーニーマップを描いて購入の導線を描くこと。もっと言えばお客様のLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を高める導線まで考慮に設計していくこと。

これをすべての局面で考え続けることができれば、あとはお客様が勝手にストーリーを伝播していってくれます。

Minimalはおかげさまで、口コミで来てくださるお客様がほとんどです。

売上No.1より認知No.1

──経営していく中で、ファンが増えていくきっかけのようなものはあったんでしょうか?

店をオープンしたのは2014年12月なんですが、その年の8月頭まで約2ヶ月間、欧米の「Bean to Bar」と言われる店をほとんど回ったんです。LinkedinやFacebook経由で海外のブランド経営者を探して片っ端から連絡するという熱意しかない方法でしたが、かなりの割合で応じてくれました。

そうやって欧米マーケットを肌で感じてみて、「これは確実に日本にブームが来る」と手応えを感じ、「絶対次のバレンタインまでに、本格的な店を開店する一番手として参入しないとダメだ」と、帰国後4ヶ月あまりで開店しました。

その見込みが当たって、プレスリリースを1本打っただけで約200媒体から取材の申し込みが殺到したんですよ。

一気にメディア露出したので、いい連鎖で、その次のテレビの取材も雑誌の取材も、全部うちに入るわけです。そうしたらこっちのもの。「日常的なモノ消費の廉価版チョコレートでも非日常的なモノ消費の高級チョコレートでもなく、コト消費を目指すブランドです」と、こちらから発信することで、自動的に「先駆者」「さきがけ」という風に取り上げていただけるようになりました。

また、細かいお話ですが、私はたとえどんなメディアの、どんな小さな記事枠だったとしても、もし1時間いただけるなら細部までご説明するようにしていました。そうした地道なことが、後ほど「同じライターが別媒体も担当していて、書いてくれた」といった副産物に繋がったりするものなんです。

私がよく言っているのは、「仮に売上No.1じゃなくてもいいから認知No.1をとる」こと。

新しい市場で認知No.1を取ってしまうというのは大事で、認知さえあれば売上はついてくるのでこれはすごく戦略的にやりましたね。

>>第5話「元組織づくりのプロが語る、ブランドを支える人材の育て方」に続く

>Minimal公式HPはこちら

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著者 小縣 拓馬

著者 小縣 拓馬

起業家向けメディア「ベンチャーナビ」 編集長。玩具会社のタカラトミーを経てDIに参画。ビジネスプロデューサーとして、主に国内ベンチャーへの投資・事業支援・戦略立案を担当。     ~「More than Meets the Eye」 これは玩具会社時代に担当していたトランスフォーマーというシリーズの代表的なコピーです。見た目だけではわからない、物事の本質に焦点を当てること。そんな想いで記事を提供していきたいと思っています。~

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