プロサッカー選手になる夢の挫折から身につけた「決断力」 GA technologies 樋口CEO(第4話)

2018.06.12

GA technologiesは、不動産業界をテクノロジーの力で改革する『Real Estate Tech』、通称ReTechの分野で、創業わずか4年半で売上100億円規模まで急成長中のベンチャー。中古不動産流通プラットフォーム「Renosy」などを提供している。そんなGA technologies代表取締役社長 樋口 龍氏に、起業家に必要な素養、組織作りなどについて聞いた。(全6話)

決断を早めるための「土壌」づくり

——起業家の素養(第2話リンク)の3つめに挙げていらっしゃる「決断すること」とはどういったことでしょうか?

例えば、日本の政治で言いますと、アベノミクスになる前の日本はあまり変われていなかったように感じます。それは「調整」するばかりで、誰も「決断」できていなかったからだと思います。こうした問題は会社経営においてもよくあります。「メンバーがかわいそう」という情や、「このプロジェクトは誰かがやってくれるはずだ」という依存により判断を先延ばしにしてしまうケースが多々あります。

例えば、組織の話。当時ある部門では20代のマネジャー2人の上に役員がおりました。このマネジャー2人が、役員を信頼していないと感じたので、即座に決断をして「わかった。半年間、横一列にするから、結果を出した方が上役でいいよ」と伝えたこともあります。こうした決断ができるかどうかがやはり大事です。しかし、決断は自分本位ですぐにできるものではなく、そのために周囲が受け入れる土壌を作っておくことも重要です。

私はメンバーに「私の判断基準は好き嫌いではなく、すべて会社がよくなるかどうか」と言い続けています。この方針で進める、新しいメンバーを入れる、リーダーを代える……、そうした決断はすべて会社がよくなるためです。納得できないメンバーもいるかもしれませんが、会社のための判断であるという軸は変えていないので、納得感はあると思っています。

 

——軸をブレさせないことが重要なのですね。

はい、そう考えています。どんなに私の判断に納得ができなくても、メンバーであるということはそのメンバーの履歴書の中に弊社の会社名が残るということです。仮に半年しかいなくても一生残る。つまり、会社が成長しないということは、メンバーを傷つけているということにもなります。それならば、会社が成長した方がいいでしょう、とこの話もメンバーによくしています。

決断できない自分と向き合った過去

——そういったご自身の「決断力」は、経験から培っていったのでしょうか?それとも、最初から持ち合わせていたのでしょうか?

学生時代、プロサッカー選手を目指してかなり過酷な練習に打ち込んでいました。しかし、サッカーをしながらも「決断力がないな」と痛感していたんです。例えば、本田圭佑選手みたいに「俺にボールをよこせ!」と言えるキャラクターの選手がいます。今ならば、私もそんな選手になれたかもしれませんが当時は言えませんでした。サッカーでは、「シュートを打たなければ点数は入らない!」と揶揄されるのですが、残念ながら私はそのようなタイプの選手でした。そのため、コーチからは「勝負しろ」「決断しろ」と常に言われていました。

 

——何かのきっかけで決断できる人間に変わったのでしょうか?経営しながら、進化していったのでしょうか?

プロサッカー選手になることを挫折したときに、プロになれなかった理由を50項目くらいノートに書きだしました。その中に、「決断力がない」とか「失敗を恐れている」といった項目が入ってきました。自分の失敗体験をベースに仕事を始めたことが、決断できる経営者になれた要因だと思います。決断力がないことは問題だと気づくことができたからこそ、変わるために踏み出せたのだと思います。

一流人材は自分の能力を客観的に俯瞰している

——自分を客観的に分析することが重要なのですね。

はい、自分を俯瞰的に見て、必要なものは何かを焦点化し、努力をすることは重要です。大谷翔平選手、本田圭佑選手、さらにはイチロー選手もそうですが、非常に若い頃から自分を俯瞰的に見ることができています。

大谷選手が高校1年生のときに書いたビジョンシートには、自分の人間的な課題や克服するポイントなどが事細かに書かれていました。俯瞰的に自分を見ることができているので欠点がわかる。欠点がわかっていれば、それを直していけます。多くの人は、自分の欠点が見えていないのだと思います。私は、サッカーをやり続けたことにより、自分の何が悪かったのかについて振り返ることができました。

 

——起業の場合は、必ずしもロジックだけを根拠にして決断できない部分も多々あるかと思います。樋口さんが決断の際に重視していることがあればお教えください。

「結果が全てである」という意識は欠かせません。結果が伴わなければ、どんなにプロセスに注力しても意味がありません。つまり、結果が出るような決断をするということです。決断したことに責任を持ち、絶対に結果を出すと決意することを重視しています。

また、創業当初から「すべてをオープンにする」ということも意識しています。赤字の時もすべて公開しましたし、全部署の進捗状況もボードに書いて公開しています。そうやって情報をオープンにすることで、全てのリスクは数値化や顕在化が可能になります。すると、不安や迷いといったモヤモヤした気持ちが晴れて、リスクを恐れずに決断に至ることができます。「数値化できないものはない」という気概のもと、すべてをオープンにして決断しやすい土壌を作っています。

 

 

>第5話「テクノロジー×不動産ベンチャーの組織論」に続く

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筆者 下平 将人

筆者 下平 将人

法律事務所、LINE株式会社の社内弁護士(リーガルカウンセル)、新規事業開発を経てDIに参画。DIでは、ベンチャー投資、投資先の経営支援に取り組み、投資先企業の社外取締役等を務める。東京弁護士会所属弁護士。Arts and Lawに所属しクリエーターの無料法律相談を担当。チャレンジングな事業領域に挑戦する起業家と汗をかき、共に理想を追い求め続ける存在でありたい。

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