【M&A特別対談】ストライプインターナショナル、子供服ECスマービー買収の舞台裏(第1話)

2018.04.17

「ライフスタイル&テクノロジー」を事業領域として、創業20年余りでグループ売上1,300億円超まで成長し続けるストライプインターナショナル。2016年10月には創業2年目のベビー・キッズアパレルEC「smarby(スマービー)」を買収し、さらなる多様化を推し進めている。今回はそんなM&Aを実施したストライプインターナショナル石川社長とスマービー遠藤社長に、その舞台裏とM&A成功の秘訣を聞いた。(全5話)

長期的なサービス提供の実現に必要だった「キッズ向け」

——サービス開始から数年で会員数40万人を突破するなど、ECサイト「smarby」は急成長を遂げられていますが、同サイトを運営されているスマービー遠藤社長にお伺いします。まずスマービーの事業概要と、創業の想いをお教えいただけますか?

遠藤:スマービーは、子育て中のママに向けたファッションEコマースを開発・運営している会社です。ママが買って楽しくなるような商材を中心に、子供服やベビー服、雑貨やレディース商品などを提供しています。

スマービーを創業したのは2014年5月、サービスをローンチしたのが同年11月です。サービスのローンチからちょうど2年後にストライプインターナショナルのグループ会社になりました。

起業の経緯として一番大きかったのは、私に子供が生まれたことです。私の妻は、色々なサイトを見ながら、ベビー服やベビー用品を買い込んでいました。次第に、妻の「もっとかわいいベビー服がほしい」というニーズが見えてくるようになり、その課題意識を解決するような事業にしようと思って創業しました。

子育ては大変なことが多いですよね。そんな中でもかわいいベビー用品を買うことで、ママはポジティブな気持ちになることができると思います。ママたちが楽しく子育てができる社会を作る環境整備がしたい、ショッピングを通じてママを含めた世の中の女性を笑顔にしたいと思って事業を行なっています。

 

遠藤崇史。株式会社スマービー 代表取締役社長。1984年生まれ。 日本政策投資銀行、ドリームインキュベータ、そしてシリコンバレーのVCを経て2014年5月にスマービーを創業。2016年10月にストライプインターナショナルのグループ化。ママのための子供服・ベビー服・雑貨の通販サイト/アプリsmarby(スマービー)は出店実績ブランド数1,000以上、40万人以上のママ会員数を誇る。

——なるほど、ご自身や奥様の実体験をもとに創業につなげられたのですね。スマービーを創業する前はどのようなことをされていましたか? 

遠藤:私は、新卒で日本政策投資銀行という政府系の金融機関に入社しました。「日本の経済を盛り上げたい」、「身近な社会を良くしたい」という志をもっていたことがきっかけです。日本政策投資銀行であれば、金融サイドから日本経済の支援ができますからね。

その後、金融サイドのみならず、新しい事業をつくりたいという思いが強くなり、ドリームインキュベータ(以下、DI)に転職をしました。DIは、大企業・ベンチャーを巻き込みながら新しい産業をつくりたいという志をもった人達が多く、自分もチャレンジしてみたいと思ったのです。

DIでの仕事はとても楽しかったのですが、次第に「自分で事業をしなければ絶対に後悔する」と考えるようになり、起業に踏みきりました。

起業するにあたって、日本だけでなく世界での情報収集が必要だと考え、アメリカのシリコンバレーのVCでスタートアップ企業がどう立ち上がるのかを見てきました。結果として、自分の一番身近な妻の課題感に着目して、事業をスタートさせることになったのです。

——ありがとうございます。続いて、石川社長、ストライプインターナショナルの事業概要と御社におけるM&Aの位置付けについてお教えください。

石川:我々ストライプインターナショナルグループはアパレルを中心に、1歳児から我々の商品を使ってもらい、シニアになっても、お客様でい続けてほしいと思っています。我々にとって、利益よりも重要なKPIは「顧客継続率」といっても過言ではありません。長期にわたってサービスを提供し続けることで得られる顧客データやノウハウを生かし、様々なサービスに展開していきたいのです。

具体的戦略として、ベビー・キッズ、ヤング、大人のカテゴリーについて、それぞれ、新品・ユーズド・レンタルのプラットフォームを作る構想があります。9個のマトリクスをイメージしてもらえるとわかりやすいと思います。9つの中で足りないカテゴリについて、自社内で開発していくのか、それともM&Aによって獲得していくかを選択していくわけです。

とはいえ、日々の業務に追われている状態で、社員にユニークなサービスを作ってもらうことはなかなか難しい。1つのモノやサービスを作ることにのめり込み、邁進しているベンチャー企業を取り込むのは効率的で魅力的な一つの手段です。

石川康晴。株式会社ストライプインターナショナル 代表取締役社長兼CEO。1970生まれ。95年クロスカンパニーを設立し、2000年に東京出店。2016年に社名をストライプインターナショナルへと変更。創業20年超にしてグループの売上は1300億円を超える。

——9つのマトリクスで事業を捉えたときに、スマービーのサービスが補完関係にあったということでしょうか?

石川:そうです。我々は、ヤングのリテールとECプラットフォームという強みをもっていましたが、子供服というセグメントのリテールとプラットフォームはありませんでした。そのため、新たに事業開発をするか、企業を買収しないといけなかったのです。

スマービーに対しては、子供版ZOZOTOWNのスタートアップ期という第一印象をもちました。キッズのマーケット自体はヤングやシニアよりも小さいですが、だからこそZOZOTOWNのようなビッグプレーヤーもあまり力を入れていない。あえてその狭い隙間を狙って、ファッションのカテゴリプラットフォーマーとして事業を立ち上げている点が非常に魅力的でした。

わずか30分で意気投合

——おふたりは、どのような経緯で出会ったのでしょうか。

石川:「BASKET(バスケット)」というネット宅配クリーニングサービス会社の創業者である松村映子さんから「おもしろい人がいる」ということで紹介してもらったのがきっかけですね。

——石川社長は、最初から買収も意識に入れてお会いされたのでしょうか。 

石川:初めてお会いする前に私が考えていたことは2つです

1つ目は、我々のグループ会社にシナジーのある事業を持っているかどうかの確認。2つ目は、出資も含めて金銭的支援を求めているんだろうな、という相手ニーズの予測です。

なので、もしシナジーがありそうなのであれば、出資、もしくは買収も視野にいれてもいいのかなという意識は初めからありましたね。

——そこからM&Aで一緒になるという結論に到るまで、どの程度かかったのでしょうか。

石川:一緒にやってみたいと、初回の面談ですぐに思いましたよ。会話でいうと30分しかしてないんじゃないかな(笑)。

遠藤:はい、30分でしたね(笑)。

石川:私は、シードレベルの企業を早く見抜いてグループ入りしてもらうことが大事だと思っています。スマービーの買収時は、創業から2年くらいしか経っていなかったので、この先の可能性や期待という部分も判断要素としては大きかったです。

遠藤:本当に、駆け出しの状態でしたからね。決算資料などから見える現時点での情報を超えて、私やスマービーに可能性を感じてもらえた点は非常にありがたいですね。

——遠藤社長は資金調達という選択肢もあった中で、よく短い期間で決断なされましたね。

遠藤:確かに資金調達とバイアウト、両方の選択肢を見比べながら動いてはいました。ただ起業家の意思決定は、事前に考え抜いた上で最後は直感が大事だったりします。

石川さんと一緒にやれるんだったら、僕にとってもスマービーにとってもプラスになると直感的に思った。短い期間で決断できた理由は、そういった感覚的なものですね。

——直感的にそう思われたのは、いま振り返るとどのような点ですか。

遠藤:会ってすぐに石川さんがスマービーの本質を見抜き、「こうしたほうがいいんじゃないの?」と指摘いただいたことがとても大きかったですね。

私は、それまで多くの経営者や投資家の方とお会いしてきましたが、「本質を捉えるスピード」においては石川さんが群を抜いていました。石川さんの経営者としてのレベルの高さを感じ、事業だけでなく、私自身の経営者としてのレベルを引き上げてくれる存在だと感じました。

加えて、石川さんは最初の時点から「1億円、2億円の運用しか経験したことがない人達に、1,000億円のサプライチェーンや1,000億円のマーケティングを見た上で、次のステージに進んでほしい。俺の指示に全部従わせるつもりはない」とおっしゃってくれました。

これだけの企業を短期間で築き上げてきた人だからこそ、起業家の気持ちをわかってくださるんだなと感銘を受けました。

石川:グループ入りしていただいた起業家は、アントレプレナーとしては一旦イグジットしますが、社内で2〜3年ほどイントレプレナーとして社員に刺激を与えてもらった上で、卒業して次のステージに進んで欲しい。そして我々は、彼らが作ってきたものやサービスをできるだけ早く取り込み、自らも急成長していく。そんなイメージを持ち続けていますね。

 

 

>第2話「ストライプインターナショナル流、投資したくなる起業家とは」に続く

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筆者 下平 将人

筆者 下平 将人

法律事務所、LINE株式会社の社内弁護士(リーガルカウンセル)、新規事業開発を経てDIに参画。DIでは、ベンチャー投資、投資先の経営支援に取り組み、投資先企業の社外取締役等を務める。東京弁護士会所属弁護士。Arts and Lawに所属しクリエーターの無料法律相談を担当。チャレンジングな事業領域に挑戦する起業家と汗をかき、共に理想を追い求め続ける存在でありたい。

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