組織崩壊の危機を乗り越えた「7つのルール」 ユーザベース 梅田優祐社長(第5話)

企業・業界情報プラットフォーム「SPEEDA」やソーシャル経済メディア「NewsPicks」を提供している株式会社ユーザベース。「経済情報で、世界をかえる」をミッションとし、2008年創業でありながら、2013年に上海・香港・シンガポールに拠点を開設し、2016年にはスリランカにリサーチ拠点を開設した。翌2017年には「NewsPicks」の米国進出に伴い、Dow Jones社との合弁会社をニューヨークに設立するなど、グローバル展開にも力を入れている。今回は、同社の代表取締役・梅田優祐氏に起業家の素養や「NewsPicks」開発秘話などについて聞いた。(全6話) ※本記事は2018年4月現在の内容です

衝突が生んだ、組織のコミュニケーションルール

――稲垣さん(ユーザベース代表取締役社長 稲垣裕介氏)と新野さん(ユーザベース取締役 新野良介氏)と梅田さん。この3名で共同創業し、うまくいった秘訣をお教えください。

単純に運が良かったのだと思います(笑)

とはいえ1年目はなかなかうまくいかなくて、よく喧嘩もしました。とくに、私と稲垣は冷戦みたいな時期もありました。12畳のマンションの一室で1~2週間一言も口をきかない時もありましたね(笑)

とはいえ、そんな時期を経ることで自分たちのルールが出来上がっていきました。例えば、「思ったことはダイレクトに伝える。フェアでオープンなコミュニケーションを徹底する」というルールもこの時に生まれたものです。

長く口をきかなかった期間に「このままじゃまずい」と思って、不満に思っていたことを伝えようと近くの居酒屋に稲垣を呼び出しました。私には、稲垣が同じ創業者なのに、いちメンバーレベルで不平不満を言っているように見えていたのです。

「創業者なのに、同じ視座をもてないのならば、一緒にやっていけない」といったことを正面からぶつけてやろうと思っていたら、逆に稲垣が「これが、俺が考える未来のユーザベースだ」と言いながら、すっと紙を差し出してきたんです。

その内容が、自分よりもずっと目線が高いものでした。私は、「そんなこと考えていたのか」と驚きました。身構えて、ファイティングポーズをとって、喧嘩してやろうと思っていた自分が恥ずかしくなってしまいました(笑)

 

――稲垣さんとの一件からどのような学びがあったのでしょうか?

稲垣と話した後に「こんな素晴らしいことを考えているのに、なんで言ってくれないんだよ。結局コミュニケーションが取れていなかっただけじゃないか」と気がつきました。

そして、「これからはどんなに小さなことでも言い合う。言わない方がルール違反。何も言っていないということは、最高に満足している状態であるということの証明である」というオープンコミュニケーションのルールができたのです。

また、「経営者3人が、それぞれ責務を果たしていないと思ったら、お互いにクビにする権利を持つ」というルールもあります。仲が良い絆の中でも、緊張感を持って、“なあなあ経営”にならないようにすることを最初から意識してきました。いい意味でガバナンスが働くルールだと思っています。

 

ぶち当たった「30人の壁」

――新野さんが、創業初期に「ルールを決めよう」と発案した時に、梅田さんはしっくりきていなかったと聞きました。(リンク

当時はたしかに、「なんか新野がフワっとしたこと言っているな」とくらいにしか思っていませんでした(笑)

新野から、「この本を読んでおいて」と『ビジョナリーカンパニー』(ジム・コリンズ 著)を渡されたりもしたのですが、私はたいして読みませんでしたね(笑)

新野は、一生懸命伝えようとしてくれていたのですが、あまり興味がもてなかったんですよね。それよりもまず売上を立てたい、早くお客様にサービスを提供をしたいということしか頭にありませんでした。

しかし、社員数が30人になった3~4年目ぐらいの時に、業績は堅調なのに、社内がギクシャクする事案が散見されるようになりました。

例えば「ニュース事業をやりたい」と社内で私が言い出した時のこと。みんな盛り上がると思って話をしたら、メンバーがシーンと静かになってしまいました。その時には、マネジメント側とメンバーの間に意識の溝ができていたんです。そして、新野に「梅田さんが自分を見失っているから何とかしてくれ。方向性がおかしい」とメンバーから相談がいく始末でした。

飲み会の席でも、創業当初はみんな未来のことしか語っていなかったのに、その頃はその場にいない人の悪口やネガティブな会話ばかりになってしまっていました。

メンバーそれぞれが、自分たちの価値観や前職の価値観をもち出して闘わせている組織状態になっていたのです。価値観には正解がないので、正解がない議論を繰り返しているだけではゴールが見えることはありませんでした。

それまでは、マンションの一室で、いつもご飯を一緒に食べたり、会社に泊まったりしていたので、何も言わなくても見ている未来は一緒でした。必然的に、メンバーの性格や価値観も理解し合うことができていました。しかし、組織が大きくなるにつれ、歪みが生まれてきていたのです。

 

――どのように問題を解決していったのですか?

意識的に一緒にご飯を食べに行くなど、コミュニケーション量を増やそうと考えました。しかし、よく考えたら社員が1,000人に増えた時にはこの方法は通用しません。

そこで、新野たちと話し合いを重ねて、「ユーザベースには、共通の価値観軸がないことが問題だ」とようやく腹落ちしたんです。私は、「3年前に新野が言っていたのはこのことだったのか」と、バリューの大切さに気がついたのです。

 

――組織運営を実践しながら、そこに気付いていったのですね。 

はい。「7つのルール」を掲げて、ようやく組織の価値観軸を掲げられるようになりました。自分たちが腹落ちする言葉にしていきたいと思い、真剣に話し合って決めていきましたね。

 

 

>第6話「経済情報で、世界をかえる」に続く

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DIMENSION 編集長

DIMENSION 編集長

「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

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