新たなカルチャーを創る、ハヤカワ五味劇場「第二章」 ウツワ稲勝社長(第3話)

2018.07.27

若い女性から圧倒的な支持を得るアパレルブランドを展開するファッションデザイナー「ハヤカワ五味」こと稲勝栞。若手女性起業家の彼女が創業から丸4年を経て得た、起業家としての素養、ブランドの育て方などについて聞いた。(全3話)

「青春経営コメディ」から「仕組みで結果を出す」フェーズへ

——ブログでは、これからが「第二章」だと発言されていました。その意味についてお教えください。

これまで(第一章)は、色々失敗して、ハチャメチャして、たくさん学んだフェーズでした。このフェーズの成果発表として、ラフォーレ原宿への出店があったと思います。第一章のタイトルをつけるなら「ハチャメチャ青春経営コメディ」みたいな感じでしょうか。(笑)

とはいえ、ひとりの力で運営していては、絶対にどこかでブランドは終わってしまいます。今のブランドにお客様がいる限り続けていきたいと考えた時に、半永久的に継続して自然にブランドが回る仕組みを作りたいと思いました。

これからの「第二章」は、しっかり組織で結果を出すフェーズだと思っています。材料は「第一章」で揃ったので、会社という仕組みでブランドの哲学を広めていくフェーズが「第二章」です。そういう意図もあり、売上目標を立てたり、最近やたら真面目な情報発信をしているわけです。(笑)

 

——就職活動もされていたと聞きました。経営を続ける決心をされた決め手はどのようなことだったのでしょうか?

根底には「ダサくありたくない」という気持ちがあります。

経営をしていると、「なんでこんなことやってるんだろう」と思う時もありますし、苦しい時もたくさんあります。でもそれを乗り越えられるのは、「これをやっている自分がかっこいい」と思うエゴ的なものだと思います。

あとは、先ほども申しましたが、自分には寿命もあるので永久にブランドに関わることはできません。どこかでお終いにする必要は確実にあります。でも今これだけお客様に必要とされているのであれば、今がそのタイミングではない。継続してやるぞという気持ちです。

しっかりこのブランドを大きくして、コンプレックスを薄めるサービスを提供するという価値観自体を、綺麗な形で次にパスしていきたいと思っています。

 

——「結果を出す」の具体的な金額目標はございますか?

短期的には「年商1億円」です。

知り合いから「小売業は1億を超えないと小売ではない」と言われて、えいや!で決めました。(笑)この目標は予定より時間がかかってしまいましたが、来年には達成できる見込みが立ちました。

中期的には「年商5億円(一旦ここが上限)」です。

なぜ「上限が5億円」かというと、「5億円を超えるとブランドが壊れていく」という話を先輩経営者に聞いたからです。売上拡大をする以上、単価を上げないのであれば、顧客の数を増やす必要があります。そうするとよりターゲットを広げる必要が出てきて、結果、ブランドの哲学にそぐわない人がそのブランドを身につけるようなことが起きると思います。

例えば、「胸が大きい人がうちの商品をつけて写真をSNSにアップする」という状況が起きかねませんが、これは避けたいです。そうなったら胸が小さい人のコンプレックスを助長しますし、結果、ブランド価値がブレてしまいます。

そのため、今のブランドのキャパシティとして「5億円」を一旦上限として決めました。もちろん今後成長していくに連れて考え方が変わるかもしれませんが、「売上」と「ブランド哲学」を両立できる数値を意識することは重要だと思っています。

 

組織の哲学観をつくる「お客様の喜び」の共有

——今後の成長に向けて、一番の課題は何でしょうか?

今一番手探りなのは組織作りです。

現状は女性メンバーしかいないのですが、男女関係なくフラットに会話できる組織にしたいと思っています。漠然としたことですが「出産しました」「結婚しました」といったことを、いち早く言ってもらえるような組織にしたいなと思っています。

その上では、「評価基準が会社を作る」というくらい、誰をどう評価するかを大事にしています。そのために今意識していることとしては、結果と責任の所在をはっきりさせることです。

私みたいな、ある意味「目立つ社長」がいると、商品が売れてもどうしても「社長がすごい」と言われてしまうことが多い。でも私はデザイナーじゃないので、商品が売れたら本来それは開発したデザイナーのおかげなんです。なので、私に届いたお客様からの反響はスタッフに意識的に還元しています。そうすることで、「この成果はあなたのおかげ」という、会社としての評価軸の見える化ができてきました。

 

——ブランドの哲学を維持する上では、組織内の価値観共有も重要だと思いますが、その点はいかがでしょうか?

「お客様の喜び」をとにかく共有することで、チームの哲学観を揃えるようにしています。

私はこの考えの大前提として「お客様が必要とし、喜ぶところにお金が発生する」という考えがあります。騙してとるお金よりも、妥当に良いと評価してもらって頂けるお金の方が、最終的には多くなってくるはずです。

最初から哲学観が一緒の人はほぼいません。「この商品に対してこういう喜び方をする人がいるから、次回はこうしてみよう」といった、日々の「お客様の喜び」の共有を積み重ねることが、会社の哲学観を揃えていく方法だと思っています。

上手くいくリーダーの共通項

——リーダーシップをとる上でのコツをお教えください。

「最終形態と、そこから逆算したマイルストーンを伝えること」です。

リーダーと大衆という対比で見ると、リーダーに従う人たちのモチベーションのほとんどは「無駄なことをしたくない」「途中で壊したり繰り返したりしたくない」ということです。

上手くいかないリーダーの特徴は、「とりあえず作ろう」と言って、ゴールも伝えず全力でスタートし、その後上手くいかないと急に方向転換をする。そうすると「無駄なこと」「壊したり繰り返したり」が多発します。メンバーもフラストレーションが溜まり、チームの足並みは揃いません。

一方で、上手くいくリーダーは、指示を出す前に、目指すべき最終形態から逆算して「無駄がないか」「途中で巻き戻しがないか」を考えて行動を設計していると思います。

私も、何かプロジェクトを進める際には、まず最終的に目指す形をメンバーに伝えます。そして、そこから逆算して、今何をしてほしいかを伝えるようにしています。もし、作ってみないと分からないという場合でも、最初に「やり直す可能性」を伝えることで、メンバーのモチベーションを削がないように気をつけています。

また、ブロジェクトの全体像が共有できていれば、今やっている作業の重要度も明確になります。私は「これは手を抜いてもいい作業です、無理しないでください」とか「これは本気でやりたい作業です、期待しています」と、取り組みに対する意識も細かに伝えるようにしています。

あと補足ですが、インセンティブ設計も重要です。例えば、「早く終わったら帰れる」といったことを伝えることで、チームのモチベーションを上げることができます。

まとめると、「最終形態と、そこから逆算したマイルストーンを伝えること」と、「インセンティブ設計をすること」がリーダーには求められると思います。そうすることで、メンバーはモチベーションが湧きますし、自発的に次のアクションも考えてくれるようになります。

「モテのカウンターカルチャー」を創る

——今後、成し遂げたいビジョンをお聞かせください。

今後うちのブランドが獲っていきたいポジションは、女性にとっての「モテのカウンターカルチャー」だと思っています。

「モテたい」という気持ちは人の欲望の根っこの部分だとは思うのですが、いま若い女性にとっての「モテ」の対義語が「バリキャリ」になってきてしまっているのではないかと若干心配しています。

私は常日頃、仕事をバリバリしながらも素敵な生き方をする「バリキャリ」女性を見ているから対義語ではないと否定できますが、多くの若い人は優秀な上司の女性が結婚していなかったり、敬遠されたりする状況を見ているのではないでしょうか。だからこそ「バリキャリ」が「モテ」の対義語、つまり「モテない(=好かれない)」になりつつあるように感じるのではないかと思います。

私はそうではないと提示していきたいです。仕事を頑張ることは、人間的な魅力に繋がるものであると伝えたい。無知を振る舞い、弱く見せることがだけが「モテ」ではないと信じていますし、実際、ゆうこすちゃんなどを初めとして新しい「モテ」の定義が確立され始めていると思います。むしろ、ビジネスのことを語ることがオシャレであるという社会にしていきたいと思っています。

その点、まず、「バリキャリ」女性に向けたファッション情報を編集して、発信するプラットフォームのようなポジションを取れたらいいなと思っています。というのも、仕事に集中している「バリキャリ」女性の場合、接する情報量が多くファッション情報を受け取りにくい状況になっているとも思っています。そもそも「バリキャリ」という表現もダサいので変えたいところですが。

彼女たちに情報を提供し、「仕事ができて魅力的な女性はうちのブランドの服を着ている」くらいのポジションを取る。それが私たちが目指す「旧来型”モテ”のカウンターカルチャー」を創ることに繋がると思っています。

 

——まだ若い顧客も多いかと思いますが、そういった方々へのメッセージでもあるということでしょうか?

将来的にはうちのブランドの情報発信を通して、「女子高生でもビジネスについて知ってるのがお洒落、かっこいい」ぐらいになってくれると嬉しいですね。5年スパンで考えれば、そういったユーザーが私たちの会社に入社して活躍してくれるかもしれません。

ブログの情報発信でタイトルの台紙をポップ調にしているのは、そういった若い層を意識しています。内容が重すぎるので、流石に女子高生には読まれていないかもしれないですけれど。(笑)

 

——最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。

本日は記事をお読みいただき、ありがとうございます。

私は小売業を個人で立ち上げてこうして会社をやっているんですけれど、小売ってお客様からお金を直接いただいて商品をお渡しするというビジネスなので、お客様から直接評価されて、しっかりそれが数字として見える、すごく気持ちのいい仕事です。

なので、小売で起業される方だったり、うちの会社に来ていただく方であったり、何かしらで小売に関わってくださる方が増えるとより面白くなっていくのかなと思っています。ぜひ、うちの会社でも、起業でも、小売の魅力をより知っていただけたら嬉しいです。

 

■読者のみなさんへのメッセージ■

 

 

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著者 村上 岳

著者 村上 岳

京都大学卒業後、2016年にDI参画。主に、国内・インドベンチャーへの投資、投資先の経営支援に取り組む。ベンチャー投資に加えて、国内上場株への投資にも携わる。

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