「カスタマー体験を上質化する」唯一無二な事業の作り方 Loco Partners 篠塚孝哉社長(第3話)

一流ホテル・旅館の宿泊予約サービス「Relux」は 、2013年3月のサービス開始以来、急成長を続け、会員数は170万人を突破。訪日の海外会員数も着実に伸ばしている。そんな同サービスを運営する株式会社Loco Partnersの代表取締役社長 篠塚孝哉氏に、起業家の素養や急成長サービスの作り方などについて聞いた。(全6話)※本記事は2018年10月2日に実施したインタビュー内容を基に作成しております。

急成長サービス「Relux」を生んだ原体験とは

――会社設立から1年半後に「Relux」をスタートされています。起業されたきっかけと、サービス開発の経緯をお聞かせください。

起業したのは東日本大震災があった2011年。リクルートのじゃらんで福島県を担当していたこともあり、地域のために何かできないかと「Loco Partners」を創業しました。

社名は、「地域のパートナーになりたい」という思いを込め、ハワイ語で Local(地域)を意味する “Loco”と、パートナーを意味する”Partners”をかけ合わせて生まれています。

先ほど「Visionは成長する」とお話ししましたが(第1話リンク)、当時の私も「地域のために」という思いだけで起業し、大それたビジョンはありませんでした。

従業員は自分たった一人で、当初の事業はいわゆるSNSコンサルティング。Facebookが登場したばかりの頃だったので、企業や宿泊施設のFacebookページの作成サポートなどをしていました。

Facebookの急成長に伴って売上も利益も一気に伸び、当時雨後の筍のように増えていたSNSコンサルティングの会社としてはかなり順調だったのですが、事業をやっていく中で「この事業は本当に地域のためになっているのか?」という疑問が湧いてきました。同時に、他社のプラットフォームに依存したビジネスのリスクも感じていました。

そこで自社プロダクトを作ろうと思い立ち、構想したのが「Relux」です。

 

――どのようにして「Relux」の構想に行きついたのでしょうか?

みなさんは旅行代理店に勤める仲のいい友達はいらっしゃいますか?もしいたら、旅行に行くときにその友達に相談したくなりますよね。

私もリクルート時代に「じゃらん」という旅行系サービスに携わっていたので、友人からよく「旅行のオススメ教えて」と相談されていたんです。当時の私からすると「じゃらん見てよ!」と言いたかったのですが。(笑)

そして私が「海か山か」「和食か洋食か」「ホテルか旅館か」「目的と予算」といくつかの基本的な質問をした上で3つくらい宿泊施設を提案をすると、100%そのうちのどれかの宿泊施設に決めてくれました。

この体験を通して思ったのは、「信頼できる情報ソースならば情報量は必要なくて、3つあれば十分なんだ」ということ。旅行者から見れば年に2、3回しか行かない旅行先の選択肢は3つでいいんです。そしてそれをシステムでやろう考えたのが「Relux」です。

 

「三方よし」ではなく「二方よし」

――もう少し「Relux」のサービス価値についてお聞かせください。

「Relux」は“宿泊施設を厳選する”というプロセスを経ている唯一の宿泊予約サービスだと思っています。

我々がミシュランガイドのように宿泊施設をすべて採点し、Reluxグレードをつけているのです。そうすることで、「2つ星ホテル」に泊まって満足したカスタマーがいたとしたら、次も「2つ星ホテル」を選びやすいような仕組みになっています。

このグレードは口コミサイトの得点とは全く意味が異なります。口コミサイトは投稿者の質によって点数が相当ぶれてしまうので、本当に信頼できる情報ではありません。ましてや旅行は年に2、3回しか行きませんので、飲食店のように慣れたカスタマーはほとんどいないマーケットです。

プロである我々が厳選した宿泊施設をご提案する。そしてカスタマーの期待値を理解することで、「カスタマーの旅行体験を上質化する」。これが私たちの唯一無二のコアバリューです。

 

――宿泊施設に対するカスタマーの期待値をコントロールされているのが価値なのですね。

おっしゃる通りです。

旅行に満足するかどうかはカスタマーの期待値がすべてです。実態が期待を上回れば満足してもらえるし、いくら良い宿泊施設でも期待値が高すぎると満足していただけません。なので「Relux」は期待値コントロールをするためのメディアだと言っても過言ではありません。

1つ星の宿泊施設に泊まったことがある方は1つ星の期待値を理解いただいているので、次回も「Relux」で1つ星の宿泊施設を探していただければ、満足度の高い旅行をすることができるのです。

 

 

――コアバリューは絶対にぶらさない覚悟を持ってやられているのですね。

「Reluxカンファレンス」という宿泊施設のみなさまをお招きするイベントを年に1回やっているのですが、その場でも私は「申し訳ありませんが、我々は宿泊施設のみなさまを向いて仕事はしません」と話しております。なお、あえて非常に語弊のあるいい方をしていますが。(笑)

宿泊施設のみなさまの方を向いた瞬間に、「Relux」のコンテンツはバイアスがかかってしまうし、広告費をいただこうものなら優先表示しなくてはならない。それは「カスタマーの旅行体験を上質化する」ことにつながりません。

一見すると強引に見えるかもしれませんが、よく考えるとこの「カスタマーの旅行体験を上質化する」という思いは宿泊施設のみなさまも同じはずなんです。宿泊施設の方々だって宿泊予約サイトの方を向いて仕事しているのではなく、カスタマーの方を向いて仕事をしています。

多くの旅行代理店では「三方よし」という考え方をうたっていますが、我々はこのような考え方はしていません。宿泊施設と同じ側に立ってカスタマーの旅行体験を上質化する「二方よし」だと考えています。

グレードが高いからといって、必ずしもカスタマーの満足度も高くなるとは限りません。先ほどもお話しした通り、想定していた「期待を上回ることで」満足していただけます。

なので、Reluxではカスタマーとの期待値調整をするためReluxグレードという独自の基準で宿泊施設を本気で評価してご紹介することで、カスタマーの満足度は高くなり、結果的に宿泊施設のみなさまへの貢献にもつながると信じています。

 

 

>第4話「世界で戦うための「徹底的なローカライズ戦略」」に続く

>第2話「表層的には見えない「事業成長の変数 」を見極める」に戻る

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DIMENSION 編集長

DIMENSION 編集長

「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

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