成功する起業家に見られる2つのタイプとは 面白法人カヤック 柳澤大輔CEO(第1話)

「日本的面白コンテンツ事業」を業務内容として掲げ、ソーシャルゲーム事業、ゲーム音楽事業、ウェディング事業、葬儀事業など、多岐にわたるビジネスで話題を呼び続けている「面白法人カヤック」こと株式会社カヤック。同社CEO・柳澤大輔氏に起業家としての心構えや、ベンチャー企業の組織づくりについて聞いた。(全5話)

起業家と経営者に求められる素養の違い

――起業家にとって大事な素養とは何でしょう?

まず、「起業家」と「経営者」の違いについて整理して考えましょう。

「起業家」はゼロイチ(無から有)を生み出して社会に対する新しい変革を起こす人、何か新しい価値観を生み出す人だと思うんです。なので、単に「サラリーマンから独立した」というだけでは起業家とは言えません。事業によって「どういった変革を起こすのか」が問われます。

柳澤大輔

面白法人カヤックCEO。1998年、学生時代の友人と共に同社を創業、2014年に東証マザーズ上場を果たす。鎌倉に本社を構え、鎌倉からオリジナリティのあるコンテンツをWebサイト、スマートフォンアプリ、ソーシャルゲーム市場に発信する。ユニークな人事制度(サイコロ給、スマイル給)や、ワークスタイル(旅する支社)を発信し、「面白法人」というキャッチコピーの名のもと新しい会社のスタイルに挑戦中。

 

対して、「経営者」は会社・事業を大きくできる人のことを指しています。なので、人から受け継いだ事業でも構いません。規模を大きくすることができれば、「経営者」としては一流です。

「起業家」が起業マインドを持ちながらも「経営者」へと変わっていくこともあれば、とにかくゼロイチが得意な「起業家」が一定規模に事業が成長した段階で後任の「経営者」にバトンタッチしたりすることもあります。

例えば、ゼロイチを生み出して一定規模まで会社を成長させた人が会社を売却して、また新たに起業するケースがあります。そういった場合に、新しく起業した会社が売却した前の会社の大きさを超えられるかというと、全く違う問題が発生して上手くいかない場合が多々あります。つまり「起業家」と「経営者」では求められる素養が違うということです。

「起業家」と「経営者」に求められる素養の違いでいうと、どちらかというと「起業家」は忘れっぽい人が向いていると思います。「経営者」は逆に振り返りが上手い人が多い。それはなぜかというと、「起業家」はゼロイチを生み出す分リスクが大きいので、それでも気にせず突き進める人が起業家に向いているからです。逆に、「経営者」はリスクの芽を先に摘むために、「忘れない」ということも素養として必要ではないかと思います。

起業家は「原体験重視型」と「着眼点重視型」の2タイプ

――柳澤さんの社長日記にも書かれていましたが、起業家には「原体験重視型」と「着眼点重視型」の2つのタイプが存在すると考えておられますね。(リンク)

そうですね。「原体験重視型」は非常に意志が強いのが強みで、しつこくやり続けることができます。何かを変革するには様々な困難が伴うので、最終的には意志の勝負になります。投資家が起業家の原体験を投資の判断材料にすると言われますが、それはこういった理由からです。ただ、その分しなやかさに欠けやすいとも考えられます。

一方、「着眼点重視型」は発想が自由で、新しいマーケットが立ち上がるといち早く参入したり、そもそも市場がないところに市場をつくったり、思いついたりすることが得意です。反面、原体験重視型のような強い意志がないこともあり、忍耐強さが欠けやすい場合もあります。私自身はどちらかというと後者の「着眼点重視型」だと思っています。

濃い原体験があるから事業のアイディアがあろうとなかろうとやり抜ける、もしくはアイディアや着眼点が次々と湧いてくる。このどちらかの素養が無いと、あまり起業には向いていないとも言えるかもしれせん。

――つまり「忘れっぽい」に加えて「原体験があるor着眼点が湧いてくる」というのが起業家の素養と言えるかもしれませんね。「着眼点重視型」の起業家が成功するための秘訣はなんでしょうか?

冒頭にもお話しした通り、起業家はゼロイチを生み出さなければいけないので、とにかく失敗を恐れずに当たるまで数を撃たないといけません。

「原体験重視型」は自分の中の原体験に対する想いが消えないので、手を打つにも原体験に沿った方法でやり続けられるしつこさがあります。一方で、「着眼点重視型」はゼロイチを生み出すまでに次々にアイディアが出せるようでないと上手くいきません。「アイディアを温めて温めて、ようやく出したら失敗した」という起業家に次のチャンスはありませんから。

「着眼点重視型」の起業家が成功するかどうかは、思いつきの多さがものをいいます。では思いつきの少ない人が起業して成功するにはどうすれば良いかということに関しては、アイディアを出すのが得意な人から着眼点を得て乗っかるという以外にない気がしますね。

「起業したいけど事業のアイディアが無い」という人を結構見聞きするのですが、「着眼点重視型」の起業家にそういった感覚はあまり見られません。事業の市場規模に大きい小さいの差はあれど、やろうと思ったら何人かが食っていける程度の事業アイディアはごまんとあるんです。そんな状態になって初めて「着眼点重視型」の起業家と言えるのではないでしょうか。

――「こういうのがあったらいいな」という程度であれば、アイディアを出そうと思えば出せると思うんですが、どのレベル感のアイディアを思いつければよいでしょうか?

これはシンプルな話で、投資に対してリタ―ンが見合う事業アイディアです。そのレベルで大量にアイディアを思いつける人はそうそういません。

困難な状況でもブレない強烈な原体験があるか、それとも大量のアイディアを事業化可能レベルで次々と思いつくことができるか。こういった素養が必要だからこそ起業家は稀少なんだと思います。

 

 

>>2話目 「ふたつとない『面白法人』を立ち上げた3人の桃園の誓い」に続く

>面白法人カヤック公式HPはこちら

>柳澤社長日記はこちら

著者 小縣 拓馬

著者 小縣 拓馬

起業家向けメディア「ベンチャーナビ」 編集長。玩具会社のタカラトミーを経てDIに参画。ビジネスプロデューサーとして、主に国内ベンチャーへの投資・事業支援・戦略立案を担当。     ~「More than Meets the Eye」 これは玩具会社時代に担当していたトランスフォーマーというシリーズの代表的なコピーです。見た目だけではわからない、物事の本質に焦点を当てること。そんな想いで記事を提供していきたいと思っています。~

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