新規事業の成否を分ける、情熱と論理のバランス ユーザベース 梅田優祐社長(第2話)

企業・業界情報プラットフォーム「SPEEDA」やソーシャル経済メディア「NewsPicks」を提供している株式会社ユーザベース。「経済情報で、世界をかえる」をミッションとし、2008年創業でありながら、2013年に上海・香港・シンガポールに拠点を開設し、2016年にはスリランカにリサーチ拠点を開設した。翌2017年には「NewsPicks」の米国進出に伴い、Dow Jones社との合弁会社をニューヨークに設立するなど、グローバル展開にも力を入れている。今回は、同社の代表取締役・梅田優祐氏に起業家の素養や「NewsPicks」開発秘話などについて聞いた。(全6話)
偽物の情熱が招いた失敗
――情熱の「本物」と「偽物」の見極めが大切だという話をいただきました。(第1話リンク)これまで、「偽物」の情熱による失敗体験はありますか?
私は、一度新規事業に失敗しています。
「SPEEDA」の後に「Thinka(シンカ)」というサービスを作り、ホームページでもリリース告知をしていました。「Thinka」は、現在の「Slack」のようにビジネス上のコミュニケーションができるプラットフォームのようなものです。
「これは絶対に俺がやりたい。絶対に世の中に求められているはずだ」とスタートを切りました。実際に、エンジニアの中でも選りすぐりのエースを集めプロトタイプを作ったのですが、リリース前に「これではダメだな」と思ってしまい、最終的にリリースを取りやめたんです。
失敗の理由はマーケットが無いなどということではなく、私の情熱が続かなかったことでした。本物の情熱ではなくて、「新規事業をやらなきゃ」という偽物の情熱で動いていたために失敗を招いてしまったのです。
右脳と左脳の高次元なバランス
――逆に、「本物の情熱」による成功体験をお聞かせください。
「SPEEDA」に対しては、当然ながら本物の情熱をもっています。
創業して1年近く経った頃にリーマンショックが起こり、データの仕入れを予定していたサプライヤーとの契約が破談したことがありました。これにより、システム開発が振り出しに戻ってしまったのです。さらに、私たちがお客様としてご契約いただきたいと思っていた投資銀行や金融機関が軒並み倒産してしまいます。当時の外部アドバイザーや社外取締役からは「会社をたたんだ方がいい」とすら言われてしまう状況でした。
その時に、「このまま借金を重ねてまでSPEEDAの開発を続けるべきなのだろうか」「いったん撤退してもう1回チャンスを待つべきなのだろうか」と自問自答しました。
論理的に冷静に判断したら、会社をたたむべきだったのかもしれません。しかし、ここまでくると、もう論理ではありません。情熱に支えられた意志の力に導かれて「続ける」という決断をしました。
この経験から、本物の情熱をもっていると、どんなに困難な状況でも踏ん張り続けることができるのだと身をもって感じたのです。おそらく、あの時コンピュータであれば、「高確率で失敗するので、今は一歩退きなさい」と判断していたでしょう。
また、「NewsPicks」についても同じです。「Thinka」の失敗から学び、「また偽物の情熱で会社に迷惑をかけるわけにはいかない」と考え、より慎重に自問自答を繰り返しましたね。
――とはいえ、本物の情熱だけに頼って上手くいくのでしょうか?
論理的に考えることも重要ですね。情熱だけでは、アイデアだけが先走り、全く違う明後日の方向に暴走するケースもありますから。
最初は、ほとばしる情熱からスタートしても、最後の仕上げは、左脳で論理的に「これはメイクセンスしているか」「理にかなっているか」について判断することが必要だと思います。
右脳と左脳が高次元でバランスが取れている事が最終的に大切になると思います。
>第3話「0から1を作り出す。NewsPicks誕生秘話」に続く
>ユーザベース公式HPはこちら
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