「諦めない」ための起業家の思考法 アカツキ 塩田元規CEO(第3話)

「諦めない道」を選び続ける

――起業家の素養(第1話リンク)の2つ目である「グリット力・やりきる力」はどのように身につけられたのでしょうか?

まず必要なのは、「自分が頑張り続けたら、なんとかなる」と信じられる、自己確信的な力。この力は、小さなことでも良いので、ピンチの局面でも「やりきる」成功体験を積み重ねることで身につきます。

次に必要なのは、「諦めるかどうか」というギリギリの分岐路で、「諦めない道」を選ぶ回数を増やすことです。

本来、起業というのは誰かに言われてやっているわけではありません。自分が本当にやりたいことをやっているのだとしたら、たとえ苦しい状況だとしても「諦めたいのか?」と自分に問うたら、「諦めない道」を選ぶはずです。

私も過去にそういった状況が何度もありました。でも、その分岐路に立たされる度に、最後の最後で「諦めない道」を選んできました。そして、選択をする度に、自分の「覚悟レベル」が上がってきたと思います。

起業家というものは、えてして起業当初は「覚悟レベル」が低いもの。私も1年目は低かったです。しかし、「諦めない道」を選ぶ回数が増えるごとに「覚悟レベル」が上がり、気づいたら昔は困難と思っていたことをなんでもなく思えるほど、見える世界が違ってきました。

そうやって「覚悟レベル」を上げることが、少々の困難ではくじけない「グリット力・やりきる力」を身につけるということではないでしょうか。小さなことからでも良いので「諦めない道」を選び、成功体験を積み重ねていくことが、起業家の「グリット力・やりきる力」につながっていくのだと思います。

 

「客観的・好意的・機会的」に物事をとらえる

――起業家の素養(第1話リンク)の3つ目である「自己内省力」はどのように身につけられたのでしょうか?

実は、起業家はもとから自責する人、つまり内省する人が多い傾向にあります。なぜなら自分の会社や事業に、心底オーナーシップを持っているからです。ですが、ここで気をつけなければいけないのが、内省するときに、うまくいかないことをすべて課題と捉えて、自分を責めてしまうこと。その思考を続けるうちに、メンタル面で参ってしまう起業家が多いからです。

重要なのは、物事を内省する際の「順序」です。私がよく言うのは、「ピンチが起きたらまずスマイル」。すべての物事を、まずはプラスに捉えてみるのです。

具体的にいうと、「客観的・好意的・機会的」の3つで、まず全ての物事を捉えます。この思考法は訓練次第で出来るようになります。

何か課題があったときに、「ここから何が学べるんだろう(客観的)」、「これを解決すれば、どんな良いことが起きるだろう(好意的)」、「これを機会に変えられるんじゃないか(機会的)」と考える癖をつける。こうして、すべての物事をプラスに捉えた後で、自己内省をします。この順序を間違えると、メンタル的に参ってしまいます。

起業家というのは、ガチガチになって成功を掴み取ろうとする人が多いものですが、ピンチに出くわしたときは、一歩引いて、「これはチャンスだ」とプラスに捉えること。その後に「自己内省」を始めること。そういった思考の順序が「自己内省力」を高め続けるうえでは不可欠だと思います。

 

リーダーだって、幸せになっていい

――塩田さんも、自責するあまりメンタル的にまいってしまったご経験がありますでしょうか?

若い頃は特に、「リーダーたるものは、こうでなければ。尊敬されなければ。」という感情が先走りやすいものです。

私の場合、起業3年目くらいのときに採用に失敗して組織が崩壊してしまい、すべてを自分で抱え込んでいた時期がありました。その頃は、体をつねっても痛くない、夜中は泣きながら吐いてしまうといった、ひどいありさまでした。

限界に達した時、「俺はもうこれ以上、背負えない」と、アカツキの社外応援団をしてくれている先輩の前で本音を漏らし、泣いたことがありました。その時に言われたのが、「げんちゃん(塩田氏)が作りたい会社って、そもそも何なの?みんなが幸せな会社をつくりたいはずなのに、なんで君自身が幸せじゃないの?」という言葉でした。

この言葉で、「俺は自分が死んで、周りを幸せにしようとしていた」と気付かされたんです。そうではなくて、「自分も幸せになっていいんだ」と思うことができました。

 

――そこから、思考の順序が変わり始めたのですね。

そうですね。「自分も幸せになっていい」と決めたとき、はじめてメンバーに「きつい」という心境をシェアしました。メンバーは「一緒に背負うよ。当たり前でしょ」と言ってくれて。この言葉でまた泣きましたね。(笑)

内省するときに自分を追い込むのは「なんとかしなければならない」という固定観念です。「しなければならない」と自分が言っているときは、一歩引いて「本当か?」と問うた方がいいと思います。アカツキでは、習慣的に「なんとかしなければならない。だけど、」と考えるようにしています。

たとえば、「上場している会社は売上・利益を上げ続けなければならない。だけど、アカツキは心や感性も大事にしよう。」「だけど、あまり利益だけにとらわれすぎず積極的に投資しよう」といった具合です。

画一的な固定観念を外して思考すること。これが起業家が幸せになるうえで、重要なことだと思っています。

※本記事は配信日現在の内容です

 

>第4話「組織論における「目に見えないもの」の重要性」に続く

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DIMENSION 編集長

DIMENSION 編集長

「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

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