
メンバー全員に価値観を浸透させる「Mission Triangle」とは Loco Partners 篠塚孝哉社長(第5話)
一流ホテル・旅館の宿泊予約サービス「Relux」は 、2013年3月のサービス開始以来、急成長を続け、会員数は170万人を突破。訪日の海外会員数も着実に伸ばしている。そんな同サービスを運営する株式会社Loco Partnersの代表取締役社長 篠塚孝哉氏に、起業家の素養や急成長サービスの作り方などについて聞いた。(全6話)※本記事は2018年10月2日に実施したインタビュー内容を基に作成しております。
採用では「スキル」よりも会社への「ロイヤリティ」を重視
――会社HPにも「Locoship」として御社メンバーが大切にしている共通の価値観を公開されているのが印象的です。社内に価値観を浸透させるにあたってのポイントをお聞かせください。
まず価値観を浸透させるために一番簡単な方法はエントリーマネジメントです。入社時点で価値観に共鳴している人を採用することが大切です。
これはベンチャーあるあるなのですが、弊社も過去にスキル重視で採用をしたあまり、何度かミスマッチが起きたり、組織に対するロイヤリティが崩壊した時期が瞬間的にありました。
その反省を生かし、現在は「ロイヤリティ」「スキル」「ポテンシャル」の3つの指標を5点満点で評価をした選考をしています。「ロイヤリティ」はどれだけ私たちの会社の文化にフィットしているか、「スキル」はその職務領域におけるビジネススキルや実績、「ポテンシャル」は入社後にどのレベルまで成長しそうか、です。
この中でもっとも重視しているのが「ロイヤリティ」です。
「スキル」と「ポテンシャル」は相互補完関係なので高ければ高いほど良いという見方をしていますね。
「ロイヤリティ」については足切りのような考え方を持っていて、「スキル」や「ポテンシャル」がいくら突出していても、「ロイヤリティ」が3点未満だったら絶対に採用しないと決めています。
――とはいえ、これだけ人材不足の環境下でその決断はなかなか勇気がいるかと思いますが、いかがでしょうか?
選考初期段階で満たない場合でも、優秀な方をみすみす逃すことはしません。
弊社は選考過程を意識的に長く設けていて、課題をやっていただいたり、実際に1日働きに来てもらったりしながら「ロイヤリティ」を引き上げられるかを見極めています。
このプロセスは「ロイヤリティ」が低い人からしたら面倒に感じることですが、本当に入社したいと思っている方なら、人生の1〜2日くらいは投資するはずです。なぜなら、転職は人生を変えうる大きな意思決定なので、このような期間を設けることは相手にとっても当社を隅々まで知り、また我々にとっても候補者の方をよく知ることができるWin-Winな仕組みです。
選考過程の途中で来なくなる人は「ロイヤリティ」がそこまでだったと諦める。でももし来てくれて、かつ選考過程の中で「ロイヤリティ」の高まりを感じることができたら採用する方針にしています。
全メンバーのベクトルを揃える「Mission Triangle」
――エントリーマネジメントを徹底した上で、さらに工夫されていることはありますか?
弊社はMission Triangle(通称:MT)というものを組織や個人全員が定義しています。
上からMission(=何のための会社なのか)、Vision(=どこを目指していくのか)、Value(=仲間と大切にしあう価値観)、戦略、戦術という順番で三角形があり、上に行くほど重要だと定めているのです。
普段働いていると、どうしても目先の戦略や戦術に意識が集中してしまいますが、このMTがあることによって、戦略はMissionやValueの下位概念であることが浸透します。例えば、Valueに「BE HONEST」とあるのに、戦術で誰かを欺いてKPIを改善するような行為は絶対に認められません。
このMissionから戦術までの内容にぶれがなく、一気通貫している会社はとても強い。さらに、メンバー全員がこれを語れる状態の組織は、どの会社を見ても非常に強いです。
――御社も社員数が200名規模まで急成長している中で、なかなかメンバー全員に浸透させるのは難しいのではないでしょうか?
そこで1年ほど前から作り始めたのが、全社のMTに対する部署ごとの「子MT」、グループや個人レベルの「孫MT」というもの。各部署や個人、それぞれが自分たちのMTを持っていて、それらが会社全体の戦略・戦術に紐づいています。
具体的には、部署ごとにMission、Visionを徹底的にディスカッションし、部署独自のMTを策定してもらっています。また、Valueに関しては、全社Valueである「Locoship」を部署の業務に合わせて読み替えるとどういう意味だろう、と考えてもらっています。言葉とは解釈によって意味が大きく異なるため、その解釈を整える作業をしています。
これと同じ作業を個人にも入社時に全員に行なってもらうので、入社時から個人MTが存在します。また、全員のMTは見える化されて共有しています。そうすることで、AさんのWillや価値観はこうなのだと、Bさんはこうだと、わかりあえることになります。
こうして定期的に会社としてのMissionやValueを振り返る機会を設けながら、価値観を浸透させていくのが我々のスタイルです。このMTの仕組みは、200名規模となった現在もかなり効果的だと感じています。
▲マーケティング統括部の「MT」例
弊社でかなり上手くいっている施策をもう一つご紹介すると、入社直後に「Welcome Stamp」というのをやっています。
「20人とランチへ行く」とか、「他部署のミーティングに全て出る」といったミッションがカードに書いてあって、達成したらスタンプが貯まっていきます。このミッションをすべて達成する頃には、自然と会社のメンバーや価値観に馴染んでもらうことができます。
マニュアル的な会社研修で一方通行に価値観を伝えるのではなく、自分の頭で考えたり、現場に実際に行って体で感じてもらう。その過程を経て体得した学びや価値観は決して忘れません。
このようなマクロな施策とミクロな施策の組み合わせが、弊社の組織文化を支えていると思っています。
>第6話「日本を代表する、満足度No.1のグローバルOTAを目指す」に続く
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