北米で起業から7年。身につけた「起業家の素養」とは トレジャーデータ創業者 芳川裕誠(第1話)

War timeを乗り越える「覚悟」

ーー起業家にとって、重要な素養を挙げるとすると何でしょうか。

CEOには“Peace time CEO(事業が順調な時のCEO)”と“War time CEO(事業が不調な時のCEO)”の2タイプが存在する、と言われることがありますが、起業家は基本的にずっと“War time”です。

ですから、そんな“War time”を耐え抜けるだけの「精神的タフネス」が大前提として必要です。

 

芳川裕誠/1978年生まれ。早稲田大学文学部卒。2001年から米レッドハットに勤務。2007年三井物産に入社後、投資担当として米シリコンバレーに渡米。2011年に米国にてトレジャーデータを設立しCEO兼共同創業者に就任。2018年7月には英Arm社がトレジャーデータを買収。その後、ArmのIoTサービスグループ データビジネス担当バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーに就任。

 

ーー芳川さんはどのように「精神的タフネス」を身につけられたのでしょうか?

私の場合は起業して会社経営を続けるうちに勝手にタフになった、というのが正直なところです。起業前の私がすごくタフだったとは思いませんが、今はすごくタフになったと思います。なので起業する前から素養として持っておかなくても大丈夫なものかもしれません。

しかし「精神的タフネス」が勝手に身につくほど、辛いことがたくさん起こる「覚悟」はしておいたほうが良いでしょう。

 

ーー逆を返すと起業家には必ず辛いことがたくさん起こる、とも言えますね。

起業して資金調達を行いチームを作ると、もう逃げることはできません。起業家には辛い出来事を上司や職場環境のせいにする、という選択肢がないのです。

実際に、私も辛いことがたくさんありました。

仲間が辞めてしまったり、逆に自ら雇った方を辞めさせたり。そもそもお客様が獲得できなかったり、あるいはお世話になったお客様が解約してしまうこともありました。

他にも、自分たちにはどうしようもできないマクロ要因に翻弄されることもあります。たとえば昨年末に株式市場が大きく値崩れしましたが、あんな出来事もスタートアップの企業価値に直撃するわけです。

自分ではどうしようもないことも含めて、起業家はすべて乗り越えていかなければなりません。その過程で「精神的タフネス」は勝手に養われていくのです。

私は2011年6月に会社を作って、2018年7月にArm社に買収されるまで7年1ヶ月、CEOとして会社経営してきました。期間を振り返ると全体的には美しい思い出なのですが、個別で思い出されることは辛いことが多いです。

これから起業するような方には、辛いことが起こる「覚悟」はしておいてください、と言いたいですね。

 

「起業家ワナビー」と「成功する起業家」の違い

ーー「精神的タフネス」以外に重要となる素養についてもお聞かせください。

「精神的タフネス」を持った上で必要なのが「チーム構築力」です。

頭脳明晰な方が起業家として必ず成功するかというと、そうではありませんよね。

“最後は人”と言われますが、私は“最初から人”だと思います。優れたチームを作ることのできる人格、度量が起業家には必要不可欠です。

 

ーー「チーム構築力」はどのように高めればよいのでしょうか

チームがうまくいくロジックはいたってシンプルです。優秀な人を雇い、彼らが最大限活躍できる環境を作り、ハッピーでいられる組織を作ることです。

弊社は創業以来、採用方針として「Hire people better than you」を大切にしてきました。要は「自分よりも優秀な人を採用する」ということです。

そのうえで、優秀な人材がハッピーでいられるための「物理的満足度」と「精神的満足度」を両方高めることを心がけてきました。

「物理的満足度」は、たとえばフリーランチといった職場環境や福利厚生を提供したり、業界水準を超える給与を保証する、ストックオプションを通じたファイナンシャルアップサイドを確保するといったことです。

「精神的満足度」を高めるためには、メンバーが「プロとして組織に認められている」と思える環境づくりが大切です。私やCTOの太田を含めた弊社のボードメンバーは、メンバーに対しての感謝の言葉を欠かすことはありませんし、「怒るときは1対1で、褒めるときはみんなの前で」という基本をとても大切にしています。当社メンバーであることの誇りにつながる会社のブランディングへの投資、オープンソースコミュニティへの積極的な貢献を評価する姿勢なども大事だと思っています。

会社で一番大事なのは「人」です。その一番大事な「人」が最大限満足できるように意識し続けることが、「チーム構築力」を高める上で大切だと思います。

 

ーー起業家の素養として「精神的タフネス」「チーム構築力」を挙げていただきましたが、数少ないチャンスを掴む「実行力」も重要と感じました。

おっしゃる通り、いわゆる“起業家ワナビー(Want to be)”と“成功する起業家”の最大の違いは、「一歩踏み出す力」です。

時流や人との出会いなど、タイミングは人それぞれだと思うのですが、勝負をかけるべきタイミングで一歩踏み出す。一歩踏み出して動きはじめた人にだけ、幸運はやってきます。

 

ーー一歩踏み出すためには何が必要なのでしょうか?

「謙虚さ」、すなわち自分一人では何もできないという意識が行動を促します。そこに「精神的タフネス」が備われば、一歩踏み出すことができるでしょう。

これは「チーム構築力」の話とも繋がりますが、「謙虚さ」があるからこそチームを大切にすることができます。

まとめると、「精神的タフネス」「チーム構築力」「謙虚さ」を持って好機に一歩踏み出せることが、成功する起業家に共通する素養だと思います。

 

 

>第2話「人とのつながりを大切にすることが「幸運」を引き寄せる」に続く

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著者 山崎満久

著者 山崎満久

著者 山崎満久

慶應義塾大学総合政策学部卒業後、株式会社じげんに入社。じげんでは、事業責任者として、インターネットセクターのプラットフォーム型ビジネス創出、推進に従事。その後、経営統合の責任者としてM&A先の経営や、株式会社NTTドコモとの共同事業創出等を経験し、DI参画。DIでは日本・米国のベンチャー投資や投資先への経営支援に加え、大手メーカーにおける事業戦略策定等の戦略コンサルティングに携わる。

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