
人とのつながりを大切にすることが「幸運」を引き寄せる トレジャーデータ創業者 芳川裕誠(第2話)
多種大量なデータを即時に収集・分析するクラウドベースのデータ管理基盤を構築し、300社以上のデータマネジメントをサポートしてきたトレジャーデータ。同社を2011年にシリコンバレーで創業した元CEO 芳川裕誠氏に、アメリカと日本のスタートアップの違い、SaaSビジネスの成功法などについて聞いた。
共同創業者2人との出会い
ーー芳川さんは起業するタイミングをどのように見極められましたか?
心の底から気持ちが盛り上がってくるタイミングって誰しもあると思うんです。その気持ちに素直になることではないでしょうか。
例えば私の場合、三井物産が運営するベンチャーファンドの投資担当としてアメリカに渡ったのが2009年のことでした。ご存知の通り、当時は世界金融危機で市況は最悪。投資家とはいえ、新規投資先を開拓できるような状況ではありませんでした。
でもそんな環境だったからこそ、自分自身の人生を省みて、色々と考えることができたのです。人生には色々な波がありますが、そういう波を大切にすれば、「勝負をかけるタイミング」は自然と見えてくると思います。
ーー共同創業者の太田さん、古橋さんと起業されています。どういったきっかけで出会われたのでしょうか?
私が前職のベンチャーファンドに勤めていた頃、ビックデータのオープンソース管理基盤ソフトを開発する著名スタートアップから投資枠を獲得するべく、営業をしていました。そして、その会社に日本展開支援という名目で日本のカンファレンスに登壇してもらったことがあったのです。
そのカンファレンスでたまたまリーダーをやっていたのが太田でした。太田は私と全然違うバックグラウンドで年齢も私より7歳若いのですが、不思議と馬が合いました。優秀なエンジニアである上に、商売をすることに対する思いもしっかり持っていて、「いいな」と直感的に思ったんです。
2010年の夏に太田が私のシリコンバレーの家に泊まりに来た時に「一緒にやろう」と誘ったら即答で「いいですよ」と言ってくれたのが全ての始まりです。本人は覚えていないといっていますが笑。
そして、太田と一緒にビジネスプランを練り始めて少し経った頃に、「すごいやつがいる」と太田が連れて来てくれたのが古橋です。実際、彼が加入したことがトレジャーデータに大きなインパクトを与えました。
今振り返っても、共同創業者の二人との出会いは幸運だったなと思います。
ーー共同創業者に関しても「Better than you」の精神だったのですね。
特に創業メンバーは相性が大事です。
我々の例を言うと、まだ社名も決めていない創業1日目に決めたのが「営業ドリブンの会社にする」ということでした。エンタープライズ向けのソフトウェアビジネスで成功している会社で、営業が強くない会社は1社もないからです。
私は太田のことを「スーパーセールスエンジニア」だと思っているほど、創業初期からビジネスに対する考えを共有することができていました。
優秀かつ、マインドを共有できる創業メンバーと一緒に起業できたことは、トレジャーデータの大きな成功要因だったと感じています。
「幸運の女神は前髪しか掴ませてくれない」
ーー創業初期に「優秀な人」を引き寄せるために意識されていたこともお聞かせください。
「人とのつながり」を大切にすることに尽きるのではないでしょうか。
世の中で自分と志を共有できる人はそう多くはありません。そういった人が現れたときは、ひたすらその人との関係を大切にしないといけません。
「幸運の女神は前髪しか掴ませてくれない」という言葉にあるように、目の前にある出会いが幸運を引き寄せるかどうかはその時点ではわかりません。貴重な一つ一つの「人とのつながり」が、結果として運を引き寄せるのです。
ーー現在の採用ポリシーについてもお聞かせください。
まずは大前提にあるのは弊社のカルチャーである「“Humility”(謙虚さ)」、そして社内政治などをしない「オープンマインド」を見ています。また、悪いニュースこそ隠さない正直さや、情報を常にオープンにしておく意識も当社の大事な価値感です。あとはエンジニアだとしても「顧客志向」を持っていることを重要視しています。
弊社は2015年に「第1回 Ruby biz Grand prix」で大賞を受賞したことに現れている通り、世界的に見ても優秀なエンジニアが揃っています。エンジニアとして腕を磨くには最高の環境があると自負しています。
しかし、我々がやっているのはR&Dプロジェクトではなくビジネスです。創業メンバーがそうであったように、いまもメンバー全員が「顧客志向」を持ち、お客様に対して真摯に向き合うことを求めています。営業・マーケティングを核とするGTMメンバーは、当社の価値をお客様に伝え、またマーケットの声を製品に反映する当社の顔としての役割を、エンジニアはそれを支える大事なビジネスのイネーブラの役割を、それぞれ高いレベルで果たしてくれています。
「人とのつながり」を何よりも大切にしてきた弊社の姿勢は、創業時から変わりません。もし我こそはと思う方がいれば、ぜひトレジャーデータの門を叩いてくれると嬉しいです。
>第3話「シリコンバレーで創業&資金調達、成功の舞台裏」に続く
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