【イベントレポート:CEO Night】プラットフォームビジネスを加速させる3要素 SHOWROOM 前田裕二社長(第1話)

株式会社ドリームインキュベータ(DI)は、起業家だけのクローズドなイベント「CEO Night」第2回を開催した。当日はSHOWROOMの代表取締役社長 前田裕二 氏に登壇いただき、DIの執行役員 宮宗孝光 とのパネルディスカッションや公開質疑を行った。本稿では、本イベントの内容を一部レポートする。(全3話)

「CEO Night」とは

CEO Nightとは、実績ある社長からスタートアップ経営の本質を学ぶ、起業家のためのクローズドな勉強会。

今回の登壇者は、こちらのお二人。

 

前田 裕二/1987年東京生まれ。2010年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系投資銀行に入社。11年からニューヨークに移り、北米の機関投資家を対象とするエクイティセールス業務に従事。株式市場において数千億〜兆円規模の資金を運用するファンドに対してアドバイザリーを行う。その後、0→1の価値創出を志向して起業を検討。事業立ち上げについて、就職活動時に縁があった株式会社DeNAのファウンダー南場に相談したことをきっかけに、13年5月、DeNAに入社。同年11月に仮想ライブ空間「SHOWROOM」を立ち上げる。15年8月に会社分割によりSHOWROOM株式会社設立、同月末にソニー・ミュージックエンタテインメントからの出資を受ける。現在は、SHOWROOM株式会社代表取締役社長として、SHOWROOM事業を率いる。2017年6月には初の著書『人生の勝算』を出版し19刷8万部超のベストセラー。近著の『メモの魔力』は、発売2日で17万部突破、現在33万部に。

 

宮宗 孝光/1974年東京生まれ。東京工業大学・大学院を卒業後(飛び級)、シャープ(株)にてDVD用半導体レーザーの開発・量産化に携わる。2002年、ドリームインキュベータに入社。大企業とベンチャーの戦略策定、幹部採用、M&A、提携などを推進。現在、執行役員として国内ベンチャー投資・上場支援事業を統括。ベンチャー3社の上場、2社の東証一部上場企業へのMBOに貢献。直近の投資・支援先はAnyMind Group、C Channel(株)など。2006年から起業家との勉強会を主催。メンバー17名中、10名が上場。支援先のトライオン(株)の社外取締役、日本スタートアップ支援協会の顧問を兼務。

 

「最初の100人のファン」をつくる

――DI宮宗:SHOWROOMは収益で国内No.1のライブ動画プラットフォームへと急成長しました。プラットフォームビジネスの立ち上げ期において、重要となるポイントは何でしょうか?

前田:立ち上げ期において重要となるポイントは3つあります。

まず1つ目は、「リーンにはじめて、マーケットインで改善していくこと。」

プラットフォームビジネスを立ち上げる際にありがちなのが、供給側の論理で、プロダクトアウト的にサービスをつくってしまうこと。そうではなくて、とにかくリーンにMVP まで持っていって、一刻も早くサービスのコアバリューを世に問うて、マーケットインで改善していく。このやり方を徹底することが重要です。

なぜこれが重要か。2つあります。1つ目はユーザーの声をスピーディーに取り入れることが、利便性向上の観点で効率が良いということ。2つ目は、サービスに改善の「余白」があることで、「その余白を埋めたい」と思ってくれるコアファンがついてくれることです。そのコアファンが、サービス立ち上げ初期の熱量を醸成してくれます。

SHOWROOMではシャオミ(中国の総合家電・携帯メーカー)の経営手法を一部参考にしているのですが、彼らは初期のコアファン、「シャオミのことが好きでたまらない」というファンをとにかく大切にしています。その結果、コミュニティ作りに成功した。

例えば、「最初の100人の夢の協力者」ということで、シャオミ製スマートフォンの電源をつけると100人のハンドルネームが表示されたり、「100人の夢の協力者」といったようなタイトルの映画をつくったり。それだけ初期のコアファン作りに対して熱量を注いでいるんです。

今では会社のキャラクターグッズだけでゆうに100億円以上売るほどファンの多い企業になっていますが、商品ひとつひとつの性能どうこうではなく、「シャオミのことが好き」という初期のファンがいて、彼ら・彼女らを大切にしてきたことが、確実に今に繋がっていると思います。

 

――DI宮宗:SHOWROOMも初期は「リーン」にスタートされたのですか?

前田:まさに。例えば、SHOWROOMではライブ配信を視聴するユーザーがアバターとして可視化されるのですが、そのアバターの初期デザインは今見ると目も当てられないですね。アイドルファンが初期ユーザーだという仮説のもと、みんなサイリウムを持ってハチマキして…、みたいなデザインだったんです。(笑)

そんな状態から始まったSHOWROOMですが、Twitterなどへ来た問い合わせに対して全て私自身が長文で返信するなど、息を吸うようにユーザーの声を聞き続けて、サービスの改善に生かしていきました。

おかげさまで、今も、多くの初期ユーザーがコアファンとしてサービスを使い続けてくれていて、SHOWROOMの遊び方などを新規ユーザーにレクチャーして回ってくれています。

このように、とにかく初期は「マーケットイン」での改善を徹底し続けること。そして改善の「余白」をつくることでユーザーの「熱量」を高め、サービスが本気で大きくなって欲しいと思ってくれる「最初の100人のファン」を作ることが重要だと思います。

 

「言霊」が機能する、2つの理由

――DI宮宗:ありがとうございます。プラットフォームビジネスの立ち上げ期において重要なポイントの2つ目はいかがでしょうか?

前田:2つ目は「ビジョンが言語化されていて、『言霊』が生じる状態になっていること。」です。

例えばSHOWROOMを企画した当初の事業計画書には、「こういう世界にしたい!」という言葉がひたすら書かれていて、目標数値といった内容は後ろの方に少しあるだけでした。そして、当時「こういう世界にしたい!」と書いたことに対する思いは、今も1ミリも変わっていません。

私は「言霊」が持つ力を本当に信じていて、その理由も2つあります。

まず1つ目は「言語化することによって他の誰かのサポートを得られる確率が上がる」からです。SHOWROOMも、立ち上げ当初に優秀な仲間を集めることができたのは「言霊」のおかげです。

SHOWROOMは初期段階ではPCサービスしかなく、急いでアプリも作りたいと考えていました。しかし、求める機能を開発しようとすると、どうしても3ヶ月はかかるとの見積もりでした。

「3ヶ月も待てないなぁ…」と悩んでいた時に、DeNA のモバゲーを開発した川崎修平(DeNAフェロー)が、私が熱く社内で語っているのを聞いたらしく、面白そうだからやってみたいと手伝ってくれたんです。そしたら、彼はジョインしてからたった2週間でアプリを作ってきました。

この事例も、明確なビジョンが言語化されていて、「言霊」として様々な人の共感を得ることで起きた例だと思っています。

2つ目は、「自分の潜在能力が引き出せる」からです。来る日も来る日も、想いを明確に言葉にして願っていると、自分自身が変わってくるんです。

とある有名タレントさんで、本当はスマートなんだけれど、自分の見せ方を計算し尽くして、あえて「バカキャラ」を演じることでトップタレントにまで上りつめた方がいます。その方に、「どうやってそこまで上りつめたんですか?」と聞くと、「毎日、『▲▲番組に出たい!』といった思いを言葉にして書いていました。」とおっしゃっていたんです。

具体的な目標を定め言語化することで、その目標を思い出すきっかけを作る。そうすることで、目標に対するモチベーションをコントロールできるようになります。

「誰かのサポートが得られる」ことと、「自分の潜在能力が引き出せる」ことが、「言霊」の持つ力だと思っています。

 

泥臭く、最初のドミノを倒しにいく

――DI宮宗:プラットフォームビジネスの立ち上げ期において重要な3つ目のポイントは何でしょうか?

前田:3つ目は、「最初のドミノを泥臭く倒しにいくこと」です。

プラットフォームビジネスと聞くと、仕組みさえ作ればあとは自然と回るというイメージを持つ方も多いと思うのですが、仕組みだけ作ったとしても最初のドミノを倒さないと何も始まりません。

なので、最初に我々がやっていたのは、国内のほぼ全てのアイドル事務所に連絡して、プラットフォームに巻き込んでいくような極めて泥臭い活動でした。あと、渋谷にあるライブハウスに毎日忍び込んでは、候補になりそうなマネジメント事務所に営業して回るということもやっていました。

それくらい泥臭くやって初めて、最初のドミノは倒れてくれるものなのかなと思います。

改めてまとめると、プラットフォームビジネスの立ち上げ期に重要な3ポイントは、① 「リーンスタート&マーケットイン」、② 「強固なビジョンの言語化」、③ 「泥臭く最初のドミノを倒しに行くこと」、です。

 

――DI宮宗:ロジックというよりは、どちらかというとエモーショナルな要素を重要視されている印象です。

そうですね。ただし、1つ目の「リーンスタート&マーケットイン」は、「とりあえずやってみる」ということではありません。付随する要素として、「一つ一つのアクションに仮説が紐づいていること」がとても重要です。

SHOWROOMの業績が一気に伸びたタイミングがあるのですが、それはいくつも試してきた仮説の中で、正しいと信じられた仮説に対してアクセルを踏んだから伸びたのだと思っています。
ですので、すべてのアクションに対して、ロジカルに仮説を持つことも重要だと思います。

 

 

>第2話「競争優位性を生み出す「サービスの世界観」」に続く

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筆者 下平 将人

筆者 下平 将人

筆者 下平 将人

法律事務所、LINE株式会社の社内弁護士(リーガルカウンセル)、新規事業開発を経てDIに参画。DIでは、ベンチャー投資、投資先の経営支援に取り組み、投資先企業の社外取締役等を務める。東京弁護士会所属弁護士。Arts and Lawに所属しクリエーターの無料法律相談を担当。チャレンジングな事業領域に挑戦する起業家と汗をかき、共に理想を追い求め続ける存在でありたい。

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