“HOTEL SHE,”を生んだコンセプトメイキングの裏側 L&Gグローバルビジネス 龍崎翔子取締役(第2話)

「ブランディング」と「マーケティング」を自然に両立させる

ーー若くして5つものホテルをプロデュースされています。それを可能にするご自身の強みはどう認識されていますか?

「ブランディング」と「マーケティング」という、普通は別の能力が必要と思われることを、どちらも自然に両立させているのが私たちの強みかなと思っています。

 

ーー具体的にはどのようなことでしょうか?

一例として湯河原にある「The Ryokan Tokyo YUGAWARA」のコンセプトメイキングをしたときのお話をします。

「The Ryokan Tokyo YUGAWARA」はもともと別の方が所有していた旅館で、ハード面の変更を一切せず、組織やコンセプト・商品開発といったソフト面の変更のみを条件に運営を引き継ぎました。

「マーケティング」の視点でマーケットを分析してみると、湯河原に来る観光客は60才以上で何回も来るようなヘビーユーザーがほとんど。新規の顧客、特に若い人が来ないというマーケットでした。

ここで普通のマーケッターが「湯河原の魅力をまだ知らない、20代30代の新規顧客をターゲットにしよう」となったら、いかにターゲット層に訴求するかを考える「PUSH型」思考になり、キャンペーンを矢継ぎ早にやるようなマーケティング施策を組み立てると思います。

しかし、私の場合「湯河原チルアウト」というキャッチコピーとイメージビジュアルを作成し、日本を代表する文人墨客に愛された湯河原の歴史への敬意をこめ、小説や漫画、雑誌をキュレーションして楽しんでいただけるような商品開発をし、SNSで発信をしていきました。

 

(The Ryokan Tokyo YUGAWARAのイメージビジュアルの一つ)

 

これにより、東京近郊で、歴史上の文豪のように、読書や仕事に集中できる場所といえば、The Ryokan Tokyo YUGAWARAであるというブランドが若者の間で成立するようになり、「PULL型」で集客できるような仕組みができたと考えています。

「ブランディング」と「マーケティング」それぞれに特化した人たちはたくさんいますが、両方をある程度のレベルでできて、収益性の高い事業モデルをつくれる。これは私たちの競争優位性であり強みだと思っています。

 

常に自分の“長針”を1分進める

ーーコンセプトメイキングについてお聞かせください。コンセプトを作る上での龍崎さんの流儀はなんでしょうか?

3つあります。

1つめが、消費者が思う理想的な空間をインプットすることです。

当然、世界中の素敵なホテルの空間の写真はSNS等を介してインプットしています。ただ、すでに存在している空間を真似することに意味はないので、そこからインスピレーションを得ることはほとんどありません。

むしろ、自分を含むユーザーにとっての理想的な空間やモノをSNS等からインプットすることが多いです。ホテルに関係なく、Pinterest上に掲載されている誰かの部屋だとか、グラフィックだとか、そういったものをみて、インスピレーションを得ることが多いです。

2つめは「自分のためにホテルをつくる」ということ。適当に決めたペルソナではなく、自分がこんなホテルがあったら泊まりたい、というものをつくっています。

たとえば私が30代男性が好きそうなホテルをつくろうとしても、95%はリサーチでそれらしい商品がつくれたとして、満足度を高めるための最後の5%が詰められないと思うんです。どこまでいっても、嘘のペルソナなのです。

一方で、私に刺さるホテルを作れれば、共感する同世代が少なくとも10万人はいるだろうという感覚もあります。

「自分のために」作るコンセプトだからこそ嘘が全くないし、信じ切れるのです。

最後のポイントが「商いは飽きない」です。要は、つくったものが100点満点なわけがないのだから、常にアップデートしながらより高得点を求め続けるということです。

矛盾しているようですが、一回コンセプトを作ったら終わりではなく、より良いコンセプトを作るスタンスを持ち続けることが大切だと考えています。

 

ーーPDCAを続ける、とも言い換えられそうです。

PDCAとは少し感覚が違っていて、私の場合は単純に「あまのじゃく」なんだと思います(笑)。

「HOTEL SHE, OSAKA」で「ライフスタイルホテル」というコンセプトを掲げたときも、当時はそれが先鋭的だったのですが、次第にホテル業界セミナーなどでも「これからはライフスタイルホテルの時代です」と言われ、同じようなコンセプトのホテルが増えてきました。

そうなってきたときに、自己否定であることを承知の上で「ライフスタイルホテルなんてもうダサい」というスタンスを取るようになりました。

背景には、自己否定になろうとも、周囲の流れに逆行するスタイルこそが、イノベーションに繋がるはず という考え方があります。

そういった考えに基づき、周りの流れに惑わされることなく、自分の時計の長針を如何に1分進めていくか というマインドで動いています。

 

 

>第3話「23歳で5ホテルを運営する龍崎氏のブランドマネジメント」に続く(9月中旬公開予定)

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著者 村上 岳

著者 村上 岳

著者 村上 岳

京都大学 総合人間学部 卒業後、2016年にDI参画。日本、米国、インドでのベンチャー投資、及び、投資先の経営支援に取り組む。直近は、2018年9月に買収したワークスタイルラボにて経営支援に携わる。

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