起業家はどんな困難な状況でも「Optimistic」たれ マザーハウス 山崎大祐副社長(第1話)

『途上国から世界に通用するブランドをつくる』というビジョンのもと、バングラデシュをはじめとしたアジア6か国でのものづくり、そして国内外38店舗を展開する株式会社マザーハウス。2006年の創業以来、代表の山口絵理子氏とともに同社を牽引してきた山崎大祐 代表取締役副社長に、経営者の素養、世界で通用する事業作りについて聞いた(全6話)

「Optimus(最善)」を尽くした先に道は開ける

ーー山崎さんが考える、起業家・経営者にとって重要な素養を3つ挙げるとするとなんでしょうか?

前提として「起業家」と「経営者」で求められる素養は全く違います。弊社では「0を1にする人」「1を10にする人」「10を100にする人」という言葉をよく使いますが、事業のフェーズによって必要な力は異なるのです。

その上で、私が起業家にとって最も重要だと思う素養は「Optimistic(楽観的)」であることです。

これは単に「楽観的になれ」という意味ではありません。「Optimistic」の語源はラテン語の「Optimus(最善)」から来ていて、私は「どんな状況でも悲観的にならず、今できるベストのことをやり続ける」という意味でこの言葉を使っています。

 

山崎大祐/1980年東京生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。大学在学中にベトナムでストリートチルドレンのドキュメンタリーを撮影したことをきっかけに、途上国の貧困・開発問題に興味を持つ。2003年に新卒でゴールドマン・サックス証券に入社しエコノミストとして経済分析や金融商品提案などに従事。2007年3月に同社を退社後、大学時代のゼミの1年後輩だった山口絵理子氏が創業したマザーハウスの経営への参画し、副社長に就任。

 

起業すると「もうダメだ」と挫けそうになる問題が何度も起こります。社員の離職や資金繰り、商品の不良品大量発生など、マザーハウスでも「もう会社が終わるかもしれない」と真剣に思ったタイミングが10回以上はありました。

そんな困難な状況でも「最善」を尽くし続けることができれば、チャンスが必ず巡ってきて可能性が開ける。どんな困難な状況におかれても最後まで諦めないことこそが起業家、経営者には一番重要な素養だと思います。

 

ーー山崎さんが「Optimistic」になることができたきっかけをお聞かせください。

これは私が育ったバックグラウンドが原体験になっているかもしれません。

私は母子家庭の決して裕福ではない家庭で育ちました。高校の3年間も、焼肉屋のアルバイトで稼いだお金を昼食代にあて、晩御飯はバイト先のまかないを食べる、といった生活を送っていました。

そんな自分が置かれてる状況を憂うことは簡単だったと思うのですが、一生懸命働き、一生懸命遊び、その時々で自分にできる「最善」なことをやり続けました。おかげで助けてくれる人がたくさん現れ、良い教育も受けてここまで来れることができたのです。

特にいまの時代は頑張ってる人、頑張ろうとしている人を助けてくれる人がたくさんいます。「最善」を尽くして頑張り続けていれば、必ず誰かが手を差し伸べてくれるし、成功への道は開ける。そう信じています。

 

相反する「両極」を意識し続ける

ーー素養の2つめについてはいかがでしょう?

2つめは「人を見る力」です。「人を見る」というのはスキルなどの外形情報だけではなく、その人の気持ちや置かれている環境、人生観などの内面にまでイマジネーションを働かせるということです。

どんなに優秀な人でも、1人でなにかを成し遂げることはできません。マザーハウスも、私と代表の山口という全くタイプも能力も異なる2人が出会ったからこそ、事業を立ち上げることができました。グローバルで600名規模まで会社が拡大した今でも、社員1人1人に大切な役割と会社への存在意義があります。

このように様々な人がそれぞれの力を発揮しあってはじめて会社というものは成長していきます。そのメンバー1人1人に適した役割と存在意義を作っていくことがリーダーの役割だとしたときに、「人を見る力」が必要不可欠になるのです。

 

ーー仲間集め、採用にも通ずる部分がありそうです。

日本は特に人材不足なので、単純に「スキル」だけで人材評価していても過激化する人材獲得競争に巻き込まれるだけです。

そうではなくて、「なぜその人が人生の大切な時間を使ってこの会社で過ごすのか?」という、価値観の部分まで掘り下げて「人を見る」。そうすることではじめて「本当の仲間」が集まると思っています。

 

ーー最後の3つめの素養もお聞かせください。

3つめは“Think globally, act locally”。「究極のマクロと究極のミクロを行き来する」とも言い換えられるでしょう。

現代はすべてのイシューがグローバルとつながっていて、世界的規模の社会課題に向き合う大きなビジョンを持たないといけない時代がきています。

一方で、1対1で相手を口説き落とせるか、ヒット商品を作れるか、という局所戦も強くないと経営者は務まりません。

マザーハウスも「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という大きなビジョンを掲げながら、一方で代表の山口自らがデザイナーとして魅力的な商品を作り、その商品がビジョンの一番の体現者となって会社を牽引しています。

 

ーー相反する力を高いレベルで発揮するというのは非常に難易度が高そうです。

我々も最初から出来ていたわけではありません。私はどちらかというとマクロ寄りの人間だったので、ミクロなリアルビジネスについて理解して実践できるようになるまでとても苦労しました。山口もデザイナーとしてものづくりはできるけれど、それをどう大きなビジョンと繋いでいくかという部分で苦しんできました。

「グローバルとローカル」「マクロとミクロ」。この一見相反する両極を意識し、向き合い続けること。これが経営者にとって大切なことだと思っています。

 

 

>第2話「人生を変える出会いを引き寄せる「たった1つ」の方法」に続く(10月下旬公開予定)

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著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。楽天に勤務後、EdTechベンチャーの東京オフィス立ち上げに参画。法人向け事業の急成長に貢献。その後グロービスにて英語MBAプログラム Japan Accountのリーダーとして、個人向けマーケティングと事業開発を担当。現在DIでは国内のスタートアップへの投資・上場支援を行い、志高い起業家への経営支援を通じて日本経済の活性化に取り組む。週末を中心にビジネススクールで思考領域の講師も務める。

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