買収からの社長就任、そして急成長。PMI成功の舞台裏にあった「出会い」 とは JMDC 松島陽介社長(第3話)

「データとICTの力で、持続可能なヘルスケアシステムを実現する」をミッションに掲げ、国内最大規模のヘルスビッグデータベースを駆使したデータ事業や遠隔医療事業などを展開する株式会社JMDC。2019年12月に東証マザーズ上場後も、その資本市場評価を急成長させ続けている。今回は代表取締役社長兼CEO 松島陽介氏に、経営者として重要な素養、そしてデータビジネス成功の要諦などについて、DIMENSIONの伊藤紀行が聞いた(全5話)

はじめは手探りだった?PMI成功の舞台裏

ーー松島さんはノーリツ鋼機が2013年にJMDCを買収した際に、副社長COOという立場でノーリツ鋼機を経営されていました。その後、JMDC社長にも就任されて急成長を果たすわけですが、PMI成功の理由はなんだったとお考えでしょうか?

まず前提として、JMDCはもともと非常にポテンシャルの高い会社でした。

創業者である木村(木村真也氏。現会長)を中心に、買収したタイミングですでに医療レセプトデータでは国内No.1の地位を築いていましたので、買収したことで急成長したというのは語弊があると思います。

背景から説明しますと、元々JMDCはオリンパスの子会社でしたが、2012年のオリンパス事件を契機に売却されました。その流れでノーリツ鋼機が2013年にオリンパス4子会社を買収したのですが、その1社がJMDCだったのです。

私はこの買収ディールのノーリツ鋼機側の責任者でしたから、買収時のデューデリジェンスなども担当していました。買収した数社の中でもJMDCが飛びぬけて良い会社であると評価していましたし、JMDCがあったからこそ複数社買収を申し出たと言っても過言ではありません。

 

ーーとはいえ、買収後は色々と困難もあったのではないでしょうか?

2013年6月にJMDCはノーリツ鋼機のグループ入りをしたのですが、私は買った会社側の経営者としてJMDCに参画しました。JMDCがグループインした直後は、社員や経営者との意識・足並みを揃える必要がありますから、各所と議論しては調整してと、手探りな部分もありました。当時は外部から来て、議論していく私をよく思わないメンバーもいたはずです。

しかし先ほど「経営者は役割の一つ」( 第1話リンク)とお話ししたとおり、プロとして会社の価値を上げていく役割に私は集中していました。そこで、単なる株主という立場ではなく「共同代表」として、一緒に会社を成長させていこうと決心したのです。

木村が会長、私が社長という共同代表制をとったのが、買収後3か月経った2013年9月のことです。

 

ーーわずか3か月でご自身が陣頭指揮をとる決断を下されたのですね。

単なる株主では価値が発揮できないと、3か月の間で判断しましたね。

社長就任後の半年間はかなり入り込んで経営に携わり、木村との関係性構築や組織制度設計などを進めていきました。ただ親会社であるノーリツ鋼機の経営も両立している状態でしたので、後任にバトンタッチできる環境を整えたのち、就任約1年で社長を退きました。

買収からわずか1年あまりの出来事で、当時の社員からすると「あの人は何だったんだ?」と思われていたかもしれません。そんなある意味「汚れ役」が、当時の私が経営者としてやるべき「役割」だったのです。

 

創業者に対する絶大なリスペクト

ーー経営者の「役割」に徹される姿勢が印象的です。創業者である木村さんとの関係性において、大切にされていたことがあればお聞かせください。

「経営者」はあらかじめ舞台が用意され、能力のある人がそれをやるという「役割」の一つにすぎません。経営者だから偉いというのは無くて、その人の能力が経営者という役割を任せるに足るというだけのことです。

しかし「創業者」は違います。創業者というのは、自ら舞台を作り出した人です。「経営者」と「創業者」を混同して語る人がいますが、これは絶対的に違う存在です。

私がどれだけ経営者として実績を残そうが、創業者の木村というポジションに成り変わることは絶対にありえない。それくらい、私は「創業者」に対して尊敬の念を持っていますし、木村はJMDCにとってオンリーワンの特別な存在だと思っています。

 

ーーその創業者への絶大なリスペクトが、現在の御社の急成長を裏支えしているようにも感じます。

そうですね。JMDCはノーリツ鋼機のグループ入りしたタイミングで、すでに健保データ国内No.1企業でした。これを成し遂げた原動力は、木村の創業者としての稀有な才覚にほかなりません。

こうした創業者の想い、企業理念を守っていく、それが私の役割です。そうした価値観をもって取り組まないと大事に作ってきた企業を託したいとは思われないですし、社員からの共感を得ることはできません。

「創業者」に対するリスペクトは当然であり、これは、買収後のPMIで共通して大切となるポイントのように思います。

 

 

>第4話「「マネタイズできる「ビッグデータ」の見極め方とは」

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著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

DIMENSION Business Producer:早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。 株式会社ドリームインキュベータからDIMENSIONファンドMBOに参画、国内のスタートアップへの投資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。主な出資支援先はカバー、スローガン、BABY JOB、バイオフィリア、RiceWine、SISI、400F、グローバ、Brandit、他 全十数社。 ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当。 著書に、「スタートアップ―起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則」

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