スタートアップ/ベンチャー経営のためのヒントやナレッジを発信

急成長するVTuber事務所「ホロライブ」生みの親、カバー 谷郷元昭社長が語る起業家の素養(第1話)

コンピュータグラフィックスのキャラクターをYouTuberとして動画投稿を行うバーチャルユーチューバー(VTuber・ブイチューバ―)事務所「ホロライブプロダクション」を運営し、「日本発のバーチャルタレントIPで世界中のファンを熱狂させる」ことをビジョンに掲げるカバー株式会社。2020年5月にはDIMENSIONからの出資を含め、総額約7億円の資金調達も発表した。同社の急成長を牽引する代表取締役社長CEOの谷郷元昭(たにごうもとあき)氏に、起業家の素養や事業成長のポイントなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの伊藤紀行が聞いた。(全5話)

本物の「ビジョン」を持つ

ーー谷郷さんが考える、起業家にとって重要な素養を3つ挙げるとするとなんでしょうか?

3つ挙げるとすると「ビジョン」「得意領域で戦う」「投げ出さない」の3つです。

起業家が掲げる「ビジョン」の中には、自社の未来をリアルに想像できている“本物”と、表層的な世の潮流をつぎはぎしただけの“偽物”があります。

本物の起業家かどうかは「ビジョンが本物かどうか」で見分けることができると思っています。

 

谷郷元昭(たにごうもとあき)/1973年生まれ
カバー株式会社 代表取締役社長CEO。慶應義塾大学理工学部を卒業後、イマジニア株式会社でゲームソフトのプロデュースを担当後、携帯公式サイト事業を統括。化粧品口コミサイト@cosme運営の株式会社アイスタイルでEC事業立ち上げ、モバイル広告企業ユナイテッドの創業に参画後、株式会社サンゼロミニッツを創業。日本初のGPS対応スマートフォンアプリ「30min.」を主軸としたO2O事業を展開し、株式会社イードへ売却。2016年にカバー株式会社を創業。

 

ーー偽物のビジョンでは意味が無いということですね。

ITによって起業のハードルが下がり、資金調達の環境も整ってきたため、昔に比べて簡単にサービスを作れる時代になりました。しかしだからといって、インターネットサービスを事業化するというのは、そう簡単な話ではありません。

トークだけ上手くても、妄想だけできても、事業を作ることはできません。

ユーザー心理を深く理解し、マーケットにフィットしたプロダクトを作る。そして、そのプロダクトと共に会社をスケールさせていく。この順序でしかスタートアップが成長する道は無いと思うのです。

昨今は「なんとなくマーケットがありそう」という漠然としたメッセージの元に資金調達を繰り返し、会社を大きく見せるスタートアップも見られますが、それでは最終的にはうまくいきません。

「ビジョン」はユーザーに必要とされるプロダクトを実際に作る力とセットになって、初めて本物になるのだと思います。

 

「自分が得意なこと」を大切に

ーープロダクトを作る力を持つうえで、2つめの素養である「得意領域で戦う」ことが重要になってくるのでしょうか?

やりたいことよりも、得意なことを重視する。これがかなり重要だと考えています。

飲食店で例えると、フランス料理を作るのが上手な人が、繁盛するフランス料理店を作りますよね。スタートアップも同じで、どれだけ伸びている市場であったとしても「得意領域で戦う」ことができている会社が成功するのです。

先ほどの「ビジョン」の話とも繋がりますが、ふわっとした未来構想から逆算して、なんとなく事業を選ぶというのが一番うまくいかないパターンです。それでは、その事業が得意な競合に勝つことはできない。

「得意領域で戦う」からこそ、しっかりとした価値あるプロダクトを作って生き残り、本物の「ビジョン」を示すことができるのだと思います。

 

ーー実現したい未来から逆算して事業を構想する、というのは一見すると正しいようにも思います。「得意領域で戦う」ことの重要性を感じられた原体験が何かおありなのでしょうか?

この考えは、私自身の過去の失敗がベースになっています。

カバーを創業する前に経営していたサンゼロミニッツは最終的には売却することができたものの、経営者としては失敗したという風に自己認識しています。

サンゼロミニッツはまさに私の“ふわっと”したビジョンのもと事業を選択したケースでした。共働き世帯が増えていく中で、地域情報を共有できるサービスが求められるんじゃないか、という構想から事業を始めたのです。そのビジョン自体は優れたものだったとしても、それを実行する適任者が本当に自分なのか?という観点が欠けていました。

結果的に自分より適任者が事業を率いる方が上手くいくということで、売却に至りました。ビジョンをうまく実現する力がなければ、結果的に世の中に役立つことができないと痛感したのです。

 

ーーその経験から、「得意領域で戦う」ことを決められたのですね。

弊社はまさに自分たちが勝てるところで戦う、という発想から生まれた会社です。

私は新卒でゲーム会社に入社していますので、若い感性を持った時間を少なくとも1万時間以上はコンテンツ領域に投資しています。業界の名だたるコンテンツホルダーともたくさん仕事をさせてもらいました。ゆえにそれが自然と自分の「得意領域」になっているのです。

それなのに、前回の起業では「地域情報を共有する」という、自分の得意領域と関係の無い領域を選択してしまいました。これは先ほどお話した通りです。

今回はコンテンツビジネスのど真ん中で、たとえ他の著名起業家が参入してきたとしても絶対に勝てるという自信がある領域で勝負することができています。

世の中の役に立つというのは、自分が本当に得意なことを世の中に還元することの結果だと私は思います。聞こえの良い大義名分だけでなく、自分がやる意味を真に問うことが求められるのではないでしょうか。

 

 

>カバーの採用情報はこちら

>カバーの公式HPはこちら

>>DIMENSION NOTEのLINETwitter 始めました。定期購読されたい方はぜひご登録ください。

著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。楽天に勤務後、EdTechベンチャーの東京オフィス立ち上げに参画。法人向け事業の急成長に貢献。その後グロービスにて英語MBAプログラム Japan Accountのリーダーとして、個人向けマーケティングと事業開発を担当。現在DIでは国内のスタートアップへの投資・上場支援を行い、志高い起業家への経営支援を通じて日本経済の活性化に取り組む。週末を中心にビジネススクールで思考領域の講師も務める。

DIMENSION NOTEについてのご意見・ご感想や
資金調達等のご相談がありましたらこちらからご連絡ください

CxO Story

CxOのインタビューはこちらでお読みいただけます