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急成長するスタートアップに共通する4つのポイント カバー 谷郷元昭CEO(第3話)

コンピュータグラフィックスのキャラクターをYouTuberとして動画投稿を行うバーチャルユーチューバー(VTuber・ブイチューバ―)事務所「ホロライブプロダクション」を運営し、「日本発のバーチャルタレントIPで世界中のファンを熱狂させる」ことをビジョンに掲げるカバー株式会社。2020年5月にはDIMENSIONからの出資を含め、総額約7億円の資金調達も発表した。同社の急成長を牽引する代表取締役社長CEOの谷郷元昭(たにごうもとあき)氏に、起業家の素養や事業成長のポイントなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの伊藤紀行が聞いた。(全5話)

4つの視点で事業を選定する

ーー谷郷さんは前回の起業における様々な経験をカバー社の経営に活かされている印象です(第1話リンク)。カバー社を創業するまでの経緯を改めてお聞かせください。

2014年11月に前回起業した会社を売却してから2016年6月にカバーを創業するまで、約2年半の起業準備期間がありました。

実は2015年頃まではインバウンド観光客向けビジネスを構想していました。また「得意領域ではない」領域で戦おうとしてしまっていたのです。

しかしピッチイベントでプレゼンしても散々な反応で、「自分が絶対に負けないような領域」、つまりコンテンツビジネスでチャレンジしなければいけないと考え直しました。

 

ーー事業アイディアを選定する上で、他にも大切にされたことがあればお聞かせください。

大切にしたポイントは大きく4つあります。

まず1つめは「市場の成長性」。

昨今でいうと、いわゆるデジタル流通革命の波に乗らないと、大きく会社を成長させることは難しいでしょう。

2つめは「市場の黎明期に参入すること」。

私が好きな経営者の言葉で「空いてる高速道路を走る」という言葉があります。週末のお出かけも、朝早く起きて空いてる高速道路を走って現地にスムーズに着く人と、遅くに起きて混んでいる高速道路を走って到着が遅れる人がいますよね。

スタートアップも同じで、みんなが良いと思ったタイミングでスタートしても遅い。一足早いタイミングで先にチャレンジしているからこそ急成長できるのです。

3つめは「収益性を確保できること」。

最後の4つめは起業家の素養としても挙げた「得意領域で戦うこと」。言い換えると市場と自分がマッチしていること。

この4つのポイントを抑えることが、成功する上で重要なポイントなのかなと考えています。

 

「VTuber」ブームの仕掛け人

ーー現在のVTuber、VR事業を選ばれた理由をお聞かせください。

コンテンツビジネスは新しいデバイスの登場によって急成長するビジネスです。例えばプレイステーション、iモード、スマートフォンといったデバイスの普及と共に、新しいコンテンツが生まれてきていますよね。

私がこれまで経験した仕事も、最初は家庭用ゲームから始まり、ゲームボーイやiモードにコンテンツの主戦場が変遷する流れを見て来ました。前回起業したサンゼロミニッツも、iPhoneが発売された一か月後に日本で初めてGPS対応したiPhoneアプリとしてローンチしています。

歴史的に起きている波を見ているので、ある意味タイムマシン経営をしながら今回の事業を選定しようと考えました。

しかしながら、私が創業した2016年頃にはすでにスマートフォンブームは終わってしまっていました。じゃあ次の波は何か、と考えた時にロジカルに出て来た答えが「VR・AR」だったのです。

実は先ほど散々なフィードバックをもらったとお話ししたピッチイベントの翌日に、私は京都で開催されていたゲームの展示会に行きました。そこに出展していたFacebook子会社のフェイスブック・テクノロジーズが開発するVRハードウェアとソフトウェア製品ブランドOculus(オキュラス)の方と仲良くなり、帰りのバスの中ではもう「VRで勝負するしかない」と決めていましたね。

 

ーーすごいスピード感ですね。とはいえ、実際にVR・ARが普及するかどうかは現在もまだわからない状況です。まさに市場の黎明期だった創業時の2016年に、どのようにして周囲を巻き込まれていったのでしょうか?

市場全体が立ち上がらないと、会社が成長することはできません。そう考えた時に、日本ではVR領域に対する資金流入が圧倒的に足りていないことが最初のボトルネックでした。海外ではすでにVR専門の投資ファンドがいくつも出来始めていたのです。

なのでモバイルオンラインゲーム事業などに精通されているgumi(グミ)の国光宏尚さん(gumi取締役会長)にVR専門ファンドの企画を提案し、国光さんが2015年に実際に立ち上げてくださったのがTokyo XR Startups株式会社でした。同社は弊社の株主としても参画してくださっています。

資金調達ができないほどの市場黎明期なのだとしたら、ファンド自体を自ら提案して作ってもらう。そうすることで、日本のVRコンテンツが世界と戦える土壌をつくることを考えたのが最初の一手でした。

 

ーー黎明期で資金流入が無いなら自分でファンドを提案してしまう、というのは非常に新しい発想です。3つめのポイントである「収益性を確保できること」についてもお聞かせください。

市場黎明期に収益性を確保するためには、ビジネスモデルがシンプルであることが大切だと思っています。

例えばSaaSは導入してもらえれば月額課金で収益になりますが、逆に、私が以前在籍していたアットコスメのようなメディア型ビジネスは複雑なビジネスモデルです。なぜなら最初に人気メディアとして地位を確保する必要があり、その上でさらにBtoBのビジネスをしっかりスケールさせないといけない。つまり二段階のハードルがあるのです。

我々が今やってるビジネスも、VTuberのコンテンツを提供し、それに対して投げ銭して頂いたり、グッズを買っていただくというシンプルなモデルです。ビジネスモデルをシンプルにすることは、特に市場黎明期で事業を展開するスタートアップにとっては大切なポイントだと思います。

 

 >第2話  40代・2度目の起業。背水の陣から見出した、生き残る術 カバー 谷郷元昭CEO

 

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著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。楽天に勤務後、EdTechベンチャーの東京オフィス立ち上げに参画。法人向け事業の急成長に貢献。その後グロービスにて英語MBAプログラム Japan Accountのリーダーとして、個人向けマーケティングと事業開発を担当。現在DIでは国内のスタートアップへの投資・上場支援を行い、志高い起業家への経営支援を通じて日本経済の活性化に取り組む。週末を中心にビジネススクールで思考領域の講師も務める。

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