「自分の人生のテーマ探し」起業の全てはここから始まった ユニファ 土岐泰之CEO(第1話)

「家族の幸せを生み出す あたらしい社会インフラを 世界中で創り出す」をパーパス(存在意義)に掲げ、次世代型保育施設「スマート保育園®」というコンセプトを軸に、午睡センサー、フォトサービス、体温計、シフト管理などのサービスを通して、保育業界全体のDXを牽引するユニファ株式会社。累計資金調達額は約90億円に上る。そんな同社代表取締役CEOの土岐泰之(とき やすゆき)氏に、起業家の素養や事業成長のポイントなどについて聞いた。(全4話)

「自分の人生のテーマ」の見つけ方

ーー土岐さんが考える「起業家にとって重要な素養」を3つ挙げるとすると何でしょうか?

一番大事なのは「社会課題を自分の人生と紐付けれるか」。

皆さん社会課題を解決したいと言いますが、社会課題は世界中に無数にあります。例えば「アフリカで栄養失調になっている子どもを助ける」というのは確かに課題だけれども、「何で自分がやるのか?」という問いに必ずしも答えられません。

自分の人生を賭けて解決したいと思える社会課題を見つけることは、実は簡単なことではないのです。

 

土岐泰之/1980年生まれ
九州大学を卒業後、2003年に住友商事に入社。その後外資系戦略コンサルティング会社のローランドベルガーやデロイトトーマツにて経営戦略・組織戦略の策定及び実行支援に関与。2013年にユニファを創業し代表取締役 CEOに就任。2017年に全世界から1万社以上が参加したスタートアップ・ワールドカップにて優勝したことに加え、採用率が全世界で2.5%未満であるEndeavor(エンデバー)起業家に満場一致で選出されるなど、国内外で高い評価を受ける社会起業家。2児の父。

 

ーー土岐さんは「家族の幸せ」というテーマをどのようにして見つけられたのでしょうか?

私の場合偶然も重なりましたが、振り返ってみると「テーマの見つけ方」には大きく3つのポイントがあると思います。

1つ目は「自分と他人の違いが何かを深掘ること」

私は起業前に東京のローランドベルガーで働いていたのですが、大学の頃から付き合って結婚した妻がトヨタ自動車で働いていて、彼女のキャリアを優先して外資系コンサルタントの仕事を辞め、子どもを連れて縁もゆかりもない豊田市に移住したことが転機となりました。

自分のキャリアを捨てることは悩みましたし、周りも「普通とは違う」選択に驚いていましたが、そのときに「家族の幸せ」が私にとってなにより大切なものなのだと気付きました。

また、幼少期を北九州の片田舎で親族に囲まれながら過ごした私にとって、豊田市に移住して主夫のような生活をする中で感じた孤立感はかなり衝撃でした。

「家族」を軸に、私と同じように苦労している子育て世代を救うことこそが「自分の人生のテーマ」であると、それらの経験を通してようやく思うことができたのです。

「自分と他人の違いが何かを深掘ること」に自分らしさ、「自分の人生のテーマ」につながるヒントが隠されているはずです。

2つ目のポイントは、「方向性が見えたら動き続けること」。

私の場合、「土岐の起業を支援する会」というのを自ら勝手に立ち上げまして(笑)、昔のコンサル時代の友人たちなどと集まって毎週テーマを発表するようなことをやっていました。

私の場合、テーマが見つからないと「自分の人生が止まる」という危機感があったので、動き続けることができました。

テーマを見つけることこそが課題であると定め、それが見つかるまでは起業しない。数年かけて「自分の人生のテーマ」を見つけられたのは本当に良かったと思っています。

3つめのポイントは、「自分の人生のテーマを見つけている人に話を聞きに行く」ことです。私の場合、住友商事時代に出資させて頂いた起業家などに話を聞いたりしに行きました。

「自分の人生のテーマ」が一生見つけられない人の方が圧倒的に多い中で、そのテーマを見つけることができている人には、何かしらの共通点があるものなのです。

まとめると「自分と他人の違いが何かを深掘ること」で自分らしさを俯瞰し、「方向性が見えたら動き続けること」。それでも見つからない時は「自分の人生のテーマを見つけている人に話を聞きに行く」。

そうやって見つけた深いレベルでの「自分の人生のテーマ」さえあれば、起業は8割以上成功といっても過言ではないと思います。

 

ーー「起業家にとって重要な素養」を残り2つ挙げるとすると何でしょうか?

「自分の人生のテーマ」を見つけた上で、2つ目に大事なのが「顧客視点を持ち続けること」。

実際いろんな挑戦が動き始めると、株主や従業員から声が挙がったり、同業他社の動きが気になり始めたりします。そんな中でも、「顧客視点を持ち続けること」。

私たちの場合は現場の保育者の方や園長先生、保育施設に来る子どもたちや保護者、そして自治体などが顧客です。この本当の顧客に向き合い続けないと、ビジネスは決して成長していきません。

最後の3つ目は「社会からの共感を形にし、企業価値に変える力」。

起業は足りないものだらけですから、借り物競争をし続けるしかありません。

共感を得る方法は起業家の人間性だったり、事業テーマの社会的意義だったりするでしょう。最後に重要となるのはこの「社会からの共感を形にし、企業価値に変える力」だと思います。

 

「スマート保育園®」ユニファ創業秘話

ーー土岐さんが起業された経緯をお聞かせください。

学生の頃から起業、経営者になりたいという思いはありました。なのでベンチャー企業でインターンをやったり、商社で投資部隊に入れてもらったりしました。

ただ一貫して悩んでいたことが、先ほど起業家の素養としてお話しした「自分の人生のテーマ」が見つからずにいたことです。

そうこうしてる間に結婚をし、子どもが生まれ、先ほどお話したようにプライベートの方での転機がきっかけで「家族の幸せ」というテーマに出会うことができました。

 

ーーそこからどういうプロセスで事業開発されたのかお聞かせください。

初めは本当にいろいろ試しましたね。

当時LINEが流行り始め、クローズドなコミュニティサービスが流行るという見立てもあったので、なんとなく「家族メディア」というイメージのもと、例えば今でいうミクシィさんの「みてね」のような写真共有アプリを作ったりもしました。

ただ私の中ではママが撮った写真を共有するだけだと、本当に幸せにしたいはずのママを写真撮影で疲れさせてしまう。本当に「家族の幸せ」につながる事業なのかと、あまり腹落ちしなかったのです。

そこでママですら喜ぶようなコンテンツが何かと考えた時に、「保育施設での日常の写真」というキーワードが出てきました。

ちょうど私の子どもが保育施設にお世話になっていたのですが、「今日は何して遊んだ?」と聞いても多くの場合「忘れた!」と言われてコミュニケーションが生まれなくて(笑)。保育施設での日常の写真が1枚でもあれば、家族のコミュニケーションを豊かにできるのではないかと考えたのです。

私の姉がたまたま保育者でしたので、「なんで日常の写真が撮れないのか?」などと聞いていくと、保育者の多忙さ、保育施設業務のディープな課題が浮き彫りになってきました。「それらを解決するシステムがあったら欲しいですか?」と聞くと、みんな欲しいとおっしゃる。ここで初めて本当の顧客に出会うことができました。

こうしてまずは写真サービス、しかも運動会などの晴れ舞台ではなくて園内の日常写真にこそ大きな課題と価値があると考え動き始めました。その先には家族のコミュニケーションを豊かにする未来がつながっていると確信できたのです。

そうして「家族の幸せを生み出すあたらしい社会インフラを世界中で創り出す」ユニファの挑戦は、私の人生のテーマ、そして自身の子育て経験から発見した課題からスタートしました。

※インタビュー記事は2021年6月10日現在の内容です

 

 

 

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DIMENSION 編集長

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「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

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