736社の調達金額分析から見えてきた、資金調達ブームの裏にある「法則」

「10億円の調達!」といったニュースが頻繁に飛び交う昨今。資金調達ブームと呼ばれて久しいが、ベンチャー企業の資金調達の実情はどうなっているのだろうか。日本最大級のベンチャーデータベース「entrepedia」収載の情報を基に、資金調達市場を分析したところ、資金調達ブームからある「法則」がうかがえる。

空前の資金調達ブーム到来?

まず、2016年にメディアなどで資金調達情報を確認することが出来た未上場企業の中での「調達金額ランキングTOP10」を見てみると、海外にもサービスを拡大し、「ユニコーン企業」の代名詞ともなったメルカリを筆頭に、2017年6月に新たに25億円を調達したseven dreamers laboratoriesなど、ユニークな取り組みをする企業が並ぶ。

この図に掲載した企業だけでも、調達額の合計が450億円を超えており、「資金調達ブーム」をけん引している存在と言えよう。

では実際に、資金調達市場は成長しているのか。まずはここ10年での資金調達額推移を確認する。

なお、小規模の資金調達を行った企業が、その情報を開示していない場合、今回の分析で利用したデータベースに収載されていない可能性があることをあらかじめお断りしておく。

資金調達額は2016年が過去10年で最高

過去10年間のベンチャー企業の資金調達額の推移を見てみると、2009年のリーマンショックを境に資金調達市場は低調に推移していたものの、2012年を底にして徐々に市場は勢いを盛り返し、2016年はベンチャー企業に対する投資が合計2,000億円を超え、2012年から見て3.3倍の規模に成長していることがわかる。

定量的に見ても市場の活性化は明らかで、近年が「資金調達ブーム」と呼ばれるのもうなずける。

実は調達件数は横ばい?

合計調達額が3.3倍に成長した2012年から2016年の5年間では、1社当たりの平均資金調達額は2016年には1億円と、2012年に比べて約5倍に伸びていることが見てとれる。しかしながら、資金調達件数は上下はあるもののさほど伸びているわけではなさそうである。

つまり、近年の「資金調達ブーム」は一部の”勝ち馬”に限った状況と推察される。資金調達の間口が広がっているのではなく、一部の有望な企業に資金が集中していると考えられる。

資金調達における「2:8の法則」

皆様は「パレートの法則」をご存知だろうか。「組織全体の2割ほどの要人が、全体の8割の利益をもたらしている」というイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレードが発見した経験則の一種である。

上の図は、2016年に資金調達を行った979社のうち、調達金額が判明している企業736社の調達額を上位から並べ、資金調達市場全体に占める割合をグラフ化してみたものである。これを見ると、全体の上位約20%の企業が、資金調達市場の80%の資金を調達しており、「2:8の法則」は、2016年のベンチャー企業の資金調達においても成立していたことがわかる。

調達額上位を占める多くの企業が、創業からある程度時間の経った企業であろうことを考えると、創業間もないシード・アーリー期のベンチャーに投資される資金は、市場全体の中で小さいと推察される。

最後に、「創業2年以内のベンチャー」を対象として、資金調達市場の状況を調べてみた。

創業2年以内ベンチャーに「資金調達ブーム」は未だ届いていない?

ここでは、設立2年目以内の企業が調達した金額が、全調達金額のうちどの程度を占めるのかを検証した。2016年については、資金調達を行った企業のうち、2015年・2016年に設立された企業を、2015年については2014年・2015年に設立された企業を集計している。

ベンチャー企業に対する投資資金の流入額全体は2015年から2016年で20%ほど増加しているにも関わらず、創業2年以内のベンチャーに流入する資金はほぼ横ばいとなっている。つまり、「資金調達ブーム」の波は、創業間もないベンチャーには届いていない状況と言える。

近年、資金調達市場が活性化している一因として、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)設立の急増が報道されている通り、ベンチャー投資に新規参入するプレーヤーが増えていることが考えられる。

一方で、こうした新規参入プレーヤーは創業初期の企業を必ずしも投資対象とせず、ある程度成長した企業を投資対象としている場合も多い。ゆえに、既に実績を積んでいる一部の「勝ち馬」に資金が集まる傾向が加速していると考えられる。

まとめ

直近のニュースでは、大型の調達を実施するベンチャー企業、ベンチャーキャピタルや事業会社によるベンチャー企業への投資強化が盛んに報道されており、こうした流れの中、定量的に見ても「資金調達ブーム」となっていると言える。

一方、今回の分析で指摘した「2:8の法則」でも明らかになった通り、必ずしも、創業初期のベンチャー企業に対してブームの恩恵が行き渡っているわけではない。

日本のベンチャーエコシステムのさらなる活性化のためには、ベンチャーが「最初の一歩」を踏み出す応援団がさらに増えることが望まれる。ドリームインキュベータも、微力ながらその一端を担っていきたい。

 

 

>entrepedia 公式HPはこちら

DIMENSION 編集長

DIMENSION 編集長

「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

Others 関連記事

DIMENSION NOTEについてのご意見・ご感想や
資金調達等のご相談がありましたらこちらからご連絡ください

E-MAIL MAGAZINE 起業家の皆様のお役に立つ情報を定期配信中、ぜひご登録ください!*は必須項目です。

This site is protected by reCAPTCHA
and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.