取締役以外の役職なし。フラットな組織を運営するポイントとは アトラエ 新居社長(第4話)

2018.08.28

求人メディア『Green』やマッチングアプリ『yenta』など、オリジナリティあるサービスを次々と展開し成長を遂げてきた株式会社アトラエ。社員の意志を最大限尊重する組織文化でも知られ、2016年に東証マザーズへ上場、2018年6月に東証一部への市場変更も果たした。同社代表取締役の新居佳英氏に、起業家の素養や、組織文化のつくり方などを聞いた。(全6話)

意欲のある人々が、ストレスなく働ける会社をつくる

——御社は取締役以外の役職が存在しないフラットなプロジェクト組織を運営されておりますが、その背景をお聞かせください。

フラットな組織にこだわったわけではありません。我々の組織コンセプトは「意欲のある人々が、ストレスなく働ける会社をつくる」ことで、フラットな組織はその手段の一つにすぎません。

人々が働く中でのストレスは非常に多いと思います。人間関係、苦手な上司、社内の手続きやルール、通勤電車、子育てや介護との両立など、すべてがストレスですよね。私はこれを出来るだけ排除して、イキイキと働ける環境を作りたいと思っています。たとえば、私みたいな人間にとっては一般的なサラリーマンとしての会社勤めはストレスが多すぎてとてもできません。(笑)でもそういう人が、得てしてパッションやパワーを持っていたりするものです。なので、私みたいな人が働き続けられる会社はどういう会社なんだろうとすごく考えました。

そこで、ストレスの要素となることを考えてみると「苦手な上司がいなければ別にいいんじゃないか」とか、「自分がオーナーシップを持って会社を変えられるんだったら、別に社長という肩書きじゃなくてもいいかもしれない」といったことが挙がってきました。だったらそういう会社にしてしまえばいいということで、今のフラットな組織形態に至っています。

フラットな組織体制以外にも、たとえば会社の近隣に住む場合の住宅手当を厚く出すことで、社員のほとんどが会社から徒歩圏内に住んでいます。これは働くことに意欲的な人にとって、会社と家が近いことでストレス軽減につながると考えているからです。通勤時間も短縮できますし、毎日の満員電車も避けられます。それに子供がいるような方だとなおさらです。子供の保育園も近いですから、「熱が出たから迎えにきてください」と言われても10分あれば迎えにいけます。そのあと会社に少し寄ってパソコンを取りに来て、自分の都合が良い時に家で仕事することだってできますよね。

このように、「意欲のある人々が、ストレスなく働ける会社をつくる」というコンセプトのもと、様々な施策を実行しています。

 

——何か参考にされた組織などあったのでしょうか?

フラットな組織の着想はスポーツから来ています。

サッカー日本代表って、なんであんなに全員がオーナーシップを持って意欲的なんだろう。これがなぜビジネス組織だと上手くいかないんだろう、と思ったんです。そこで冷静にサッカー日本代表とビジネス組織を比べてみると、どうやらビジネス組織には上下関係がありすぎるんじゃないかという結論に至りました。本田と長友に役割の違いはあれど上下関係はありませんよね。

特に「意欲のある人々が集まる」組織である場合は、肩書きによってマネジメントしたり、肩書きによって権利を付与しすぎたりすることはあんまり良くないんじゃないか。その考えをつきつめていったら、どんどん組織がフラットになっていきました。

 

フラットな組織における意思決定と評価

——フラットな組織形態では意思決定が難しくなると一般的には言われますが、そのあたりはいかがお考えでしょうか?

今も試行錯誤を続けている最中ではありますが、「思ったより出来るな」という印象です。

たとえば、意思決定を社員40人全員で全てしていては終わらないと思ったので、ボードミーティングという意思決定の会議の場を作りました。会社にとって重要な影響のある意思決定、ないしはメンバーだけでは責任がとれないレベルの意思決定に関する事前の協議は全てボードミーティングで行なっています。一般的にいう取締役会に近いですね。ボードメンバーは私含めて4名ですが、メンバーの選考は私が行なっています。

ただし、そこでの意思決定は確定事項ではなくて、ボードメンバーが決めたことを他のメンバーにも共有しますし、異論があればメンバー全員が意見を言える状況にしています。なので、ボードミーティングの役割としては、政治における議会制民主主義の議会に近いかもしれません。

 

——もう一つフラットな組織で気になるのが評価方法や評価基準についてですが、こちらはいかがでしょうか?

弊社は上司がいないので、決まった評価者は存在しません。360度評価といって、評価対象者自らが指定した5人による評価方法を実施しています。

評価基準の指標に関しては、会社への貢献度合いを指標化した評価マトリクスを作っています。この指標もどんどん改善されていっていますが、これを決めているのは私ではなく、有志の社員で作られたワーキンググループのメンバーです。ワーキンググループが出してきた要素に対して、ボードメンバー含め全社員が意見を言えるので、「この指標はおかしくないか」となったら、またワーキンググループが持ち帰り議論する仕組みです。

 

——ワーキンググループのメンバーはどのように選出されているのでしょうか?

ワーキンググループのリーダーだけは、立候補者の中からボードミーティングで決めます。他のメンバーは、リーダーが自由に決めて良いことにしています。立候補者リストをリーダーに渡した後は、そのリストから選んでもいいし、立候補はしていないけれど能力があると思った人を口説いて入れてもいいです。

 

多様な人材が意欲的に働くためのバランス設計

——評価に対する、報酬の分配についてはいかがお考えでしょうか?

もちろんベーシックインカムという考えも候補としてはありましたが、今一番いいと思っているのは、短期的な成果やパフォーマンスではなく貢献度合いに合わせて報酬を分配する形です。360度評価で出た貢献度をもとにしています。

ここで難しいのが、評価の重み付けです。とある人が、経験もない仕事をしている人の評価をすると、どうしても仕事内容で見えない部分があります。例えば、一年目の子ばかりが評価すると「あの先輩優しいから」と人気投票みたいになってしまう可能性もありますよね。その比重を考慮して、「みんなからの評価の高い人からの評価」が重くなるよう設計しています。

 

——近年の「働き方改革」により、熱量と働き方のバランスが問われるようになってきましたが、その点はいかがでしょうか?

もちろん「10時以降は働いてはいけない」「土日は働いてはいけない」という最低限のルールは設けていますが、そこが本質ではないと思います。個人的には、近年話題になっている「ブラックワーカー」の定義が間違っていると思っていて、「長時間労働=ブラック」ではありません。むしろ「長時間労働×エンゲージメントが低い状態」をブラックと呼ぶべきです。

エンゲージメントが高くて長時間労働する人はビジネスリーダーです。例えばソフトバンクの孫正義さんやユニクロの柳井正さんもそう、もちろん私や役員の何人かもそうです。一日中自分たちのビジネスの事ばかり考えているでしょう。そういったエンゲージメントの高い状態の人たちは、好き好んで働いているわけですし、苦痛だとも思っていません。そんな人たちから仕事を取り上げてはダメです。プロのスポーツ選手に「8時間超えたのでこれ以上筋トレや練習は一切しないでください」なんて誰も言わないですよね。それと同じです。

だからと言って、「俺もやっているんだからみんなもハードに働け」というのは、またこれも違います。それぞれ価値観や異なる事情があって当然ですし、エンゲージメントが低いのに無理に長時間働かせられている状態は、是正勧告をすべきでしょう。

つまり、昨今の「働き方改革」は、本来は労働時間だけではなく、エンゲージメントをチェックすべきだと思います。それを全て一律で「労働時間を短縮!」としてしまうと、日本からビジネスリーダーがいなくなってしまいます。

弊社には、時短勤務で働いているママ社員もいれば、寝る間も惜しんビジネスに没頭する若手もいます。いろんな勤務形態のメンバーがいますが、社員の気持ちとして、「勉強している」「楽しんでいる」という感覚の時は、会社としては止めようがありません。本人の気が済むまで続けたらいいと思っているので、そういう環境作りだけはしっかりするようにしています。繰り返しになりますが、「意欲のある人々が、ストレスなく働ける会社をつくる」というコンセプトに即した労働環境をつくることが、我々のミッションだと思っています。働く時間だけでは判断しないようにしています。

 

 

>第5話「「全員経営」を体現する企業文化のつくり方」に続く

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筆者 下平 将人

筆者 下平 将人

法律事務所、LINE株式会社の社内弁護士(リーガルカウンセル)、新規事業開発を経てDIに参画。DIでは、ベンチャー投資、投資先の経営支援に取り組み、投資先企業の社外取締役等を務める。東京弁護士会所属弁護士。Arts and Lawに所属しクリエーターの無料法律相談を担当。チャレンジングな事業領域に挑戦する起業家と汗をかき、共に理想を追い求め続ける存在でありたい。

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