ヒット作『THE TEAM 〜5つの法則〜』誕生秘話 リンクアンドモチベーション 麻野耕司取締役(第2話)

企業組織の変革を支援するコンサルティング会社「リンクアンドモチベーション」。組織改善クラウド「モチベーションクラウド」の立ち上げなどで、スタートアップ界でも大きな存在感を放っているのが、同社取締役の麻野耕司氏だ。2019年4月に発売された著書「THE TEAM〜5つの法則〜」(幻冬社)は発売2週で5万部突破のヒットを記録している。そんな同氏が語る、成功する経営者の素養、成長する組織・事業の生み出し方とは。(全5話)※本記事は2019年4月18日に実施したインタビュー内容を基に作成しております。

「コミュニケーションの法則」の威力

ーー2019年4月に著書「THE TEAM 〜5つの法則〜」が発売されました。

今回の「THE TEAM」では、チームを動かして行くための「チームの法則」を 5つにまとめて紹介しています。

『5つの法則』
・Aim(目標設定)の法則
・Boarding(人員選定)の法則
・Communication(意思疎通)の法則
・Decision(意思決定)の法則
・Engagement(共感創造)の法則
※「THE TEAM 〜5つの法則」より引用

 

 

これらの法則が生まれたきっかけも、先ほどお話しした経営危機(第1話リンク)での体験でした。

今でも忘れないのが、2012年6月末の出来事。四半期末の最終日に、少しでも業績目標に近づこうとパソコンとにらめっこする私を尻目に、メンバーは18時くらいに仕事を切り上げ、何も言わず飲みに行ってしまったことがありました。みんなすっかり目標達成を諦めてしまっていたのです。

「なんでみんなわかってくれないんだ」と苛立つ自分を見て、ある「Communication(意思疎通)の法則」を実践出来ていないことに気づきます。それは、人は「理解してから理解される」という法則です。

私はわかってるつもりになっていたけれど、18時に切り上げて帰る部下たちの気持ちを本当の意味では理解できていなかったのです。

そこで後日、メンバーを集めて話を聞くミーティングを開きました。「何か思ってることある?」と聞く私に対し、最初はみな黙っていましたが、徐々に「麻野さん、僕たちのことをどうせ駒だと思ってますよね?」「麻野さん、私たちの話なんて聞くつもりないですよね」と言いはじめたのです。

 

ーーそれはリーダーにとってはなかなか厳しい意見ですね。

心のどこかで「部下よりも自分の方が状況を理解している」と思っていたのが態度に出ていたのでしょう。私なりに葛藤はありましたが、そのミーティングをきっかけに「Communication(意思疎通)の法則」に立ち返り、部下の気持ちをまずは理解するように意識し始めました。

具体的にやったことは、ミーティングの際に部下の話を途中で遮るのではなく最後まで聞くこと。クライアント先への移動中もスマホで仕事をするのではなく、「最近どう?」と部下の話を聞いてみること。

そんな細かな行動変化でしたが、チームの雰囲気はみるみるうちに変わっていきました。私が部下の話に耳を傾け、理解しようと試みたことで、逆に部下たちも私の考えや戦略を理解して実行してくれるようになったのです。

そこから業績もV字回復していきました。人は理解してから理解されるという「コミュニケーションの法則」の威力を身をもって体感したのです。

 

士は己を知る者の為に死す

ーー「人は理解してから理解される」という法則を意識することがそれだけの効果を発揮したのですね。

中国の故事に「士は己を知る者の為に死す」という言葉があります。

これは勇猛果敢に立ち向かってきた戦士に敵将が「なぜそこまでするのか」と聞いたのに対して戦士が言った言葉です。「自分のことを理解してくれている」ことが、それほど人を突き動かすエンジンになるということです。

人間関係においてコミュニケーションを阻害しているのは、ほとんどが「自分をわかってくれていない」という負の感情です。逆に、「自分のことをわかってくれている」人の話は聞きたいと誰しもが思います。

ビジネス界ではコミュニケーションを「簡潔に」「論理的に」と言われますが、お互いを理解し合うためには必ずしもそのやり方だけが効果的であるとは限りません。

「人は理解してから理解される」という法則を理解し実践すること。これはチームの大小問わず、チーム内のコミュニケーションを変革する一歩になります。

 

ーー戦略とは一見離れた部分に成功の秘訣が隠れている、と。

戦略も当然ながら大切で、戦略が外れていたらメンバーがモチベーション高く実行しても成果は出ません。

ただ良い戦略だけでも不十分で、戦略が絵に描いた餅で終わらないためには、実行するメンバーの心が動いていないといけません。

普段弊社がクライアントに提供しているのは「企業組織をどう変革するか」というセオリーですが、そのセオリーを、実体験を元に少し小さな単位の「チームをどう変革するか」に落とし込んでみたのが「THE TEAM」です。

チームに関わるすべての皆さんに「THE TEAM」を読んでいただき、日々の活動に役立てていただければと思います。

 

 

>第3話「強烈な「目的意識」が見える世界を変える」に続く

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リンクアンドモチベーション 麻野耕司取締役 著書 「 THE TEAM 〜5つの法則〜」発売中

著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

DIMENSION Business Producer:早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。 株式会社ドリームインキュベータからDIMENSIONファンドMBOに参画、国内のスタートアップへの投資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。主な出資支援先はカバー、スローガン、BABY JOB、バイオフィリア、RiceWine、SISI、400F、グローバ、Brandit、他 全十数社。 ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当。 著書に、「スタートアップ―起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則」

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